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心房細動の3Dカテーテル治療(2012年11月12日掲載)

比嘉 聡・牧港中央病院

負担少なく慢性化防ぐ

脳梗塞の中で最も重い後遺症を起こす心原性脳塞栓(そくせん)症は心房細動が主な原因です。この不整脈は加齢に伴い増加し、超高齢化社会を迎えるわが国では2030年には100万人を超えると推定されています。

治療は(1)合併症のコントロール(2)抗凝固療法(血液の凝固を防ぐ薬物治療)による脳塞栓症の予防(3)不整脈治療による正常な脈拍の維持と心房細動の慢性化防止です。

不整脈治療には抗不整脈薬を使用する薬物治療がありますが、患者によっては無効な場合や副作用のため服用ができないこともあります。非薬物治療には血管を通して心臓内に入れたカテーテル(細い管)で患部を焼くカテーテルアブレーションという治療があります。近年の技術革新に伴い3Dマッピングシステム(3次元画像処理システム)を使用する方法が主流になり、治療の有効性と安全性が飛躍的に向上しました。

最新の調査ではカテーテルアブレーションは心房細動の慢性化を約10分の1に減少させる効果があると報告されています。そのため最近は心房細動が慢性化する前に早めにカテーテルアブレーションを行うという施設が増加しています。

具体的には心房細動の主な発生源である肺静脈(肺からの血液を心臓に送る血管)と左房(左側の心房)との間の電気的交通を遮断する肺静脈隔離術という方法が行われています。術者は治療中コンピュータースクリーン上に表示された患者の心臓の3D画像を見ながらカテーテル操作を行います。カテーテル先端を肺静脈周囲の左房の壁に当てて高周波で一定時間加熱します。

これを繰り返すことで点と点がつながり焼灼(しょうしゃく)線(治療によってできた線)が出来上がります。治療部位を3D表示することにより、従来法と比べ切れ目のない連続的な焼灼線を作ることができます。

この治療は肺静脈を心房細動の発生源とする患者には極めて有効です。しかし、この方法は万能ではありません。なぜなら持続性心房細動(心房細動が停止しにくくなった状態)の患者では肺静脈以外からも心房細動が発生することが多いからです。肺静脈隔離術が無効な場合はさらに心房細動の発生部位を検索し追加焼灼を行うテーラーメイド治療が必要です。

以前は心房細動の慢性化を防ぐ有効な方法がありませんでしたが単回または複数回のカテーテル治療により正常な脈拍を長期間維持し慢性化を防止することが可能になっています。