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女性の肺がん増加(2012年11月5日掲載)

河崎 英範・国立病院機構沖縄病院

非喫煙者も早期検診を

11月は「肺がん啓発強化月間」です。現在日本全国で年間約7万人(2010年で6万9813人)の方が肺がんで亡くなられ、今後も増加すると予想されています。これまで肺がんは男性に多い病気といわれていましたが、最近女性で増加しています。女性に多いがんは乳がん、大腸がん、胃がんについで肺がんとなりますが、がんによる死亡率は大腸がんについで第2位で今後も増加が予想されています。沖縄も同様な傾向で、当院のデータでも1980年代の肺がん患者のうち女性は2割でしたが、2000年代には3割に増加しています。肺がんの原因にたばこが強く関わっていることはよく知られ、男性の肺がん患者の9割は喫煙者です。

しかし女性の肺がん患者の中で喫煙者は3割にすぎません。7割の方は、たばこを吸ったことがありません。非喫煙者の肺がんの原因として最も関連が強いと考えられているのは受動喫煙です。たばこにはニコチン、タールを含め約4千種類の化学物質が含まれ、そのうち約2百種類の有害物質、50以上の発がん物質が含まれます。喫煙者本人が吸い込む主流煙よりも、喫煙者周囲の人が吸い込む副流煙の方に有害物質がより多いことが分かっています。夫が家庭内でたばこを吸う女性は、そうでない女性にくらべ肺腺がんになる危険性が2倍以上に高くなることが報告されています。がんの発生は発がん物質による遺伝子のダメージが原因です。男性に比べ女性の遺伝子の方がダメージを受けやすいことが報告されています。これには女性ホルモンの影響も関係していると考えられています。全国的に男性の喫煙率は少なくなりつつありますが、女性の喫煙率はほぼ変わらないか逆に若年者では上昇していることが関連しているかもしれません。将来に向け大きな問題として挙げられています。

肺がんの原因として、喫煙以外に大気汚染・排ガスなど環境的暴露、食生活、ホルモン、遺伝的要因などが考えられています。喫煙者に発生する肺がんと、非喫煙者に発生する肺がんで、がんの増殖・進展に関わる遺伝子の変化が異なり、非喫煙者に多くみられる遺伝子変化があると新しい分子標的治療薬に有効であることや、喫煙者の肺がんに比べ進行が遅く予後がよいことが報告されています。このような肺がんはレントゲン写真では淡い影で確認が困難なことがあり、発見には胸部CTが有用です。

少しずつ研究、診療技術が進んでいますが肺がんは発見しにくい病気であることに変わりありません。肺がんを治す方法はより早い段階で発見し治療することです。肺がんのリスクを減らすにはまず禁煙ですが“私はたばこを吸わないから大丈夫”とは思わず、しっかり検診を受けることが大切です。