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食事療法できていますか(2012年10月8日掲載)

山本 壽一・ハートライフクリニック

「刺激制御」で誘惑対策

食事療法って難しいですね。日ごろの診療では患者さんに守りなさいと指導しているこの私がテレビで野球を見ながらパリパリと…。食事療法で良くなる病気は、糖尿病、高血圧症、コレステロールや中性脂肪が多い高脂血症、痛風の原因となる高尿酸血症、腎臓の合併症、そしてメタボリック症候群や肥満症などたくさんあります。沖縄では肥満者の割合が45・2%なので、他の病気も含めると県民の2人に1人以上は食事療法が必要と考えられます。食事療法の話は診察室だけでなく、家庭でも、友達とも、居酒屋でも、至る所で聞かれます。必要なのはわかっているけど続けるのは難しいのが実際ではないでしょうか。しかし、健康のためには食事療法を実行しないと大変なことになります。

正しい食事療法の勉強をした人がどんなきっかけで守れなくなるかを調査しました。食事療法が守れなくなる最も危険な状況は環境因子の外的誘惑でした。つまり、目に付くところにお菓子があった、ケーキ屋の前を通った、焼きたてのパンのにおいがしたなどです。次に多かったのは、対人関係因子の間接的誘惑でした。これは、隣の人がおいしそうに食べているのを見てほしくなる状況です。人からカメーカメーと勧められて食べる直接的誘惑の3倍も多い結果でした。その他の状況としては、ご褒美として食べた、空腹で食べた、ストレスで食べたなどですが、最初の二つの状況が圧倒的に多い結果でした。

次にどんな場面で失敗が多いかを調べたところ、正月や盆などのイベントの時、イベント以外の外食時、日常の生活での場面の順で失敗が多く報告されました。実際に普段の診察でも年末年始、清明祭、入学祝い、また盆のころには糖尿病患者さんの血糖値が高くなります。

以上の結果を参考に正しい食事療法を維持するための方法を考えてみましょう。まず、見えるところにお菓子などを置かない、ケーキ屋の前は通らない、パン屋の前では鼻をつまむ、自分の食事時間以外には人が食べているところを見ない。このような対策方法を刺激制御と言います。それでは、正月や盆などのイベント時にはどうしましょうか。この時期に入院したいと言われる患者さんもいます。これも刺激制御ではありますが、医療保険の財源を考えると安易には同意できません。きっと何かよい方法があるはずです。これは読者の皆さんへの宿題です。私たち医療者は皆さんの相談には乗れますが代わりに食事療法をすることはできませんから。