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風邪?(2012年10月1日掲載)

宇座 達也・まえはら内科

どうする 「いつもと違う」に注意

誰もがかかることのある風邪ですが、患者さんの訴えを聞いていると誤解の多い病気であることがわかります。今回は、その事をお話ししたいと思います。

風邪とは正式には「かぜ症候群」と言います。症候群とは、似た症状(症候)の集まり(群)という意味で、いろいろな原因が含まれます。「かぜ症候群」のいろいろな原因とは、いろいろな病原微生物によるということです。

いろいろな病原微生物には主にウイルスと細菌があります。ウイルスは細菌より小さな微生物で、抗生剤は効かず、一部の例外を除いて特別な治療薬はありません(たとえば、例外としてインフルエンザはウイルスですが治療薬があります)。幸いに、ウイルスによる風邪のほとんどは、自然経過で治癒します。

一方、細菌は抗生剤が効きます。とても大切なポイントとして、風邪の9割ほどはウイルスによるものという事です。ですから、風邪の多くは特別な治療はできませんが、特別な治療を要さずに治るともいえます。医師が風邪の診療にあたって考えていることは、原因の菌がウイルスなのか細菌なのか、もしウイルスなら特別な治療法があるか、細菌ならどの抗生剤がいいのかということです。

以上の説明から、以下の患者さんの訴えのおかしいのがわかりますか? 「けさから、のどが少し痛くなってきて、出張があるので早めに治したくて来ました」「昨日から咳(せき)がでてきて、孫の世話をしないといけないので、点滴でもしておこうかと思って来ました」「念のために抗生剤が欲しくて来ました」

残念ながら、この場合の症状からは出張のために早く治す風邪薬はありません。点滴で、風邪を早めに治すこともできません(点滴の利益、不利益も皆さんに知っておいてほしい事項ですが今回のテーマではないですね)。念のための抗生剤は9割の確率で、無駄な服薬になる可能性があります(抗生剤の不適切な使用は、薬剤耐性菌の増加、副作用の可能性、医療費の増加などの問題ありです)。

今回、風邪の大半は自然治癒することを強調するために、話を単純化しました。しかし、実際の風邪様症状の診療は、二次感染や合併症、特殊な原因や重症度など気を付けないといけない事があります。いわゆる「普通の風邪」の特に初期は、病院を受診する必要はありませんが、「いつもと違う風邪症状」、例えば、激しい頭痛や嘔気(おうき)、呼吸器症状(ぜーぜーする、息苦しい)等があるようでしたら早めに近医を受診してください。