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結核予防週間によせて(2012年9月24日掲載)

久場 睦夫・国立病院機構沖縄病院

風邪症状続けば受診を

結核と聞くと、まだあるの? などと考える方が多いようです。確かに、戦後間もないころに比べると、格段に減少しています。しかし、ここ十数年ほどは減少速度が鈍り、全国では、いまだに2万3千人を超える新規患者をみています。罹患(りかん)率はアメリカなど他のいわゆる先進国と比べてみると、約4倍の多さです。

本県の新規患者いわゆる罹患率はというと、ほぼ全国平均であり、最近5年でみると、2007年人口10万対18・4から08年20・1、09年17・0、10年18・7、11年19・2とほぼ横ばい状態です。筆者の属する施設の結核病棟は、結核患者さんの中でも他の人へ感染をきたす恐れのある方々が入院されています。新規患者さんの人数はここ3年では、09年104人、10年98人、11年103人とやはり横ばいといったところです。年齢は18〜105歳で、うち70歳以上が183人・60%と高齢者が過半数を占めています。

発見動機は咳(せき)、発熱、食欲不振、体重減少、血痰(けったん)、息切れ、喘鳴(ぜいめい)等と多岐にわたりますが、高齢者と比較的若年者では若干異なります。咳、息切れ、血痰、胸痛等の呼吸器症状を呈して発見された方々は69歳以下では62%を占めますが、70歳以上では34%と比較的少なく、逆に肺結核ではあるものの呼吸器症状に乏しく、微熱、食欲不振、体重減少などの全身症状を契機に発見された方々は69歳以下では22%であるのに対し、70歳以上では60%と多くなっております。つまり、高齢者では、咳や痰などの呼吸器・肺の症状がなくとも微熱や食欲不振などがあれば結核も念頭に置くことが大事になります。

結核の治療経過はほとんどの方で良好ですが、残念ながら不幸の転機をとられる方もおられます。数的には毎年4〜5%ほどで、75歳以上が多いのですが、60歳以下の比較的若年者にもみられます。高齢者では発見時、結核の症状が重篤あるいは全身状態が不良、もともと臓器障害を有するため結核の治療が困難、などに起因します。一方、比較的若年者においては、症状がありながら放置し、発見時は病状進行が著明で治療に奏功する間もなく、入院後短期間で不幸の転帰をとってしまうという構図がほとんどです。

結核は決してまれな病気ではありません。ご本人はもちろん、他の人の健康を守る上でも早期発見・早期治療が大切です。咳や痰、血痰などの呼吸器症状にとらわれる事なく、微熱や風邪のような症状が2週間以上も続けば、結核も念頭に近くの医療機関を受診しましょう。