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便秘と大腸がん・悪化の場合(2012年9月10日掲載)

大嶺 靖・沖縄赤十字病院

検査受けて

それまでは「たかが便秘」と思っていましたが、数年前の経験でそれは払拭(ふっしょく)されました。日本内科学会は「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」を便秘と定義しています。男性より女性に多く、加齢とともに増えていくといわれています。便秘には便の状態や腸内の移動に問題がある機能的便秘と大腸の腫瘍などで便の通りが障害される器質的便秘があります。

便中の食物繊維や水分が少ない、高齢や寝たきりで腸の運動が低下している、精神的ストレスや環境の変化で自律神経のバランスが崩れている、便意の我慢や高齢のため直腸での排便反射が低下しているなどが機能的便秘の原因として挙げられます。直腸に便がたまると通常は便意が出現しますが、我慢し続けているとだんだん便意が遠のきます。それが習慣になると便秘になります。

日常生活での簡単な便秘対策としては、(1)朝起きてコップ1杯の水を飲む。それで胃腸の動きがよくなります(2)食物繊維の多い食事を摂る(3)便意は我慢しない(4)便意がなくてもトイレに座ってみる。排便の習慣化は大事です(5)ラジオ体操で体を目覚めさせる。散歩でもいいです。体を動かすと腸の動きもよくなります。以上、便秘の解消には有効です。ちなみに食物繊維を多く含んでいる食物には野菜(根菜類、ほうれん草、かぼちゃ、ブロッコリーなど)、果物、いも、豆、きのこ、海藻、玄米などがあります。

次に器質的便秘ですが、大腸の腫瘍・炎症、巨大結腸などが原因で起こるものをいいます。何ら原因もなく、急に便秘になったり、便秘と下痢を交互に繰り返す場合には大腸の腫瘍によって腸が狭くなっていることも考えられます。大腸の悪性腫瘍のなかで最も多いのは大腸がんです。大腸がんによって腸が狭くなると通常の便秘と同じ症状が出現します。また比較的肛門から近いところの大腸がんでは細い便や水様便になったりもします。

さらに狭くなると腸が詰まった状態になります。いわゆる腸閉塞(へいそく)ですが、大腸がんの3〜15%に合併するといわれています。便秘のほとんどは機能的なものです。ただ少ないですが、大腸がんのような病気の症状のこともあります。便秘が増悪するようなら思い切って大腸検査を受けてみてはどうでしょうか。病気がないことがわかれば安心できると思います。もちろん人間ドックで定期的にチェックするのが一番のお勧めです。