沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2012年掲載分 > 減塩食

減塩食(2012年8月13日掲載)

米田 恵寿・県立宮古病院

最も身近な高血圧対策

1733年に英国のスティーブン・ヘールが馬の頚(けい)動脈にガラス管を挿入し、血液が2・5メートルの高さまで上昇することを示して血圧の概念を確立しました。血圧とは血管にかかる圧力のことで、心臓が収縮して血液を送り出すときに血圧が最大となり、収縮期血圧といい、また心臓が拡張するときの血圧は最小となり、拡張期血圧といいます。高血圧とは収縮期血圧が140または拡張期血圧が90以上に保たれた状態です。現在、日本の高血圧人口は4000万人といわれ、そのうち800万人が高血圧の内服治療を受けています。

定期健診で血圧が高いと言われて外来を受診される患者さんがいます。患者さんの高血圧の原因や合併症を調べて高血圧の内服治療を勧めますと症状がないこと、血圧の薬を一度内服するとずっと飲み続けることになるからと治療を拒否する患者さんが時々います。生活習慣を改善し次第に血圧が下がれば内服治療を止めることもできますと説明してもなかなか理解していただけないことが多いです。高血圧は長年もの間特有な症状もなく、突然の脳卒中、動脈瘤(りゅう)破裂、心筋梗塞(こうそく)、腎障害として症状が現れることからサイレント・キラー(静かな殺し屋)とも呼ばれています。高血圧治療は食事療法と運動療法、薬物療法が基本です。

だれでも実践できそうな食事療法の中の塩分制限(ナトリウム制限)について話します。日本人の高血圧原因の一つに塩分の過剰摂取が挙げられています。塩を多く含んだしょうゆ・みそなど塩辛い味が好きな日本人は1日平均食塩摂取量12グラムです。日本高血圧学会は1日食塩摂取量6グラム未満を目標としています。ちなみに、調味料として塩分をほとんど摂らない南米アマゾン奥地の原住民には高血圧はないようです。食塩の高血圧をもたらすメカニズムは、食塩を過剰に摂取するとのどが渇き、水を多量に飲みます。その水分で血液の量が増え、大量の血液を体中に送り出すために心臓が強く鼓動し血圧を上昇させます。加えてナトリウムは交感神経やホルモンを介し血管を収縮させ、血圧はますます上昇します。

減塩1日1グラムごとに収縮期血圧が約1減少するとの報告があります。厚生労働省の「健康日本21」における試算では国民の血圧が平均2下がれば脳卒中の死亡者は約1万人減り、循環器疾患全体では約2万人の死亡が予防できると報告しています。原因によらず、ほぼすべての高血圧で塩分摂取制限は必要です。塩辛い味が好きな方、少量の減塩であれば舌が次第に薄味になれます。少しずつ塩分を下げて健康・長寿を実践しましょう。