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あなどれない大腸がん検診(2012年7月23日掲載)

樋口 大介・国立病院機構沖縄病院

二本立て検査 高い発見率

2010年の日本のがん死亡者数は、女性では大腸がん、肺がん、胃がんの順に多く、男性では肺がん、胃がん、大腸がんの順でした。日本人の大腸がんは50歳代くらいから増加しはじめ、高齢になるほど加速度的に増加します。最近では食生活の欧米化に伴い大腸がんの発生は欧米白人とほぼ同じ程度に増加しています。家族の大腸がん、肥満、糖尿病、喫煙、飲酒、運動不足、野菜摂取不足、加工肉摂取は大腸がんの危険因子と考えられています。

日本の大腸がん検診は便潜血検査がなされていて、非受診者と比べて受診者には約3割の死亡率減少効果が認められています。

大腸がん検診の受診率は最近のデータではアメリカ52・1%、韓国34・1%に対して、わが国では18・6%と低迷しています。ちなみに沖縄県の大腸がん検診受診率は14・3%でした。

07年度世論調査によると、実際にがん検診を受けなかった1500人に理由を聞いてみると「たまたま受けなかった」が約3割、「健康状態に自信があり必要性を感じなかったから」が約2割、「心配な時はいつでも受診できるから」が約2割でした。つまり実際に症状が出て心配にならないとがん検診を受ける気にはならないわけです。

特に便潜血検査の場合、自分の便を棒ですくいとるのに気が進まないのはよくわかります。しかし症状が出る前に大腸がんを発見できれば助かる可能性が高いわけですから、そこは我慢したいところです。便潜血の検診を受けた人の約7%が「精密検査が必要」という判定を受けます。精密検査を受けた人の中で大腸がんが見つかる確率は約3%です。小さい数字に思うかもしれませんが、この3%は胃のバリウム検査の場合より3〜4倍よい数字なのです。

便潜血陽性と出て、きちんと大腸カメラ等を受ける人の割合は約6割で、残りの約4割の人々は、大腸がんである可能性を秘めたまま放置してしています。これでいいわけはありません。40歳以上の人は便潜血検診を必ず受けて陽性なら必ず大腸カメラを受けましょう。

はじめに触れました大腸がんの危険因子をもっている方、腹痛、血便、下痢、便秘、便が細い、腹部が重い感じなどの症状のある方は、「大腸カメラを受けたい」と言って、最寄りの消化器内科を受診しましょう。必要な検査とともに普通に大腸カメラもすることになるでしょう。大腸カメラはもはや、それほどキツイ検査ではありません。