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光による目の障害(2012年7月2日掲載)

早川 和久・早川眼科医院

見え方チェック習慣付け

5月21日の朝、日食を観察された方も多いと思います。日本眼科学会の啓蒙(けいもう)活動や天候のおかげで幸い重篤な日食網膜症の報告はなかったようです。日食網膜症とは、強い光線のエネルギーが一度に作用することで黄斑(網膜の中心にある最も解像度の高い少しへこんだ部分)にある視細胞やその奥の組織が焼けてしまい視力障害が生じる状態をいいます。

網膜には光エネルギーを電気信号に変換し情報処理する機能が備わっています。視細胞の先端から生えた毛のような部分(外節)が光を電気信号に変換していますが、一定の光障害を受けると新しい外節に交代し、抜け落ちて奥に接する細胞(色素上皮細胞)によって処理されます。

個人差はありますが、長年大量の光線にさらされていると徐々にこの機能が低下して黄斑に処理しきれなくなった外節の残骸がたまるようになります。さらに進むと、そこに血管が侵入し(新生血管)、網膜に腫れや出血を引き起こすことで中心のゆがみや暗点を自覚するに至ります。この状態が加齢性黄斑変性症です。最近まで、この病気に対する有効な治療法はなかったのですが、新生血管に吸着し弱いレーザー光と反応することで病変だけ焼く方法(光線力学治療)や、新生血管の勢いを抑える分子を眼球に注射する方法(抗VEGF療法)が選択できるようになり治療が可能となっています。

とはいえ、最も重要なことは、網膜光障害を悪化させる喫煙、メタボなどの生活習慣の是正と、普段から不必要に光線を目に当てないように工夫することです。外出時の帽子や日傘、保護眼鏡の装用は重要です。翼状片や白内障の原因は紫外線ですが、網膜へ悪影響を及ぼす光は青の可視光線であるため、サイドガードのしっかり付いている琥珀(こはく)色のサングラスが最も効果的に光障害を予防できます。黄斑変性の初期症状は中心部のゆがみ、暗点などですが両目で見ていると気づかないことが多いため、毎日決まった時間に片目をつぶって見え方をチェックする習慣を付けることも大事です。

加齢性黄斑変性症と似た症状を示す病気には、黄斑前膜や黄斑円孔といった黄斑の上にもともとあった膜が収縮して黄斑に皺(しわ)や孔を作ってしまう病気や糖尿病、高血圧、動脈硬化が原因で網膜に出血や腫れを引き起こすものもあります。早期であれば、手術を含めた多くの治療方法が選択できますので眼科専門医にご相談ください。