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肺ドックの勧め(2012年6月26日掲載)

川畑 勉・国立病院機構沖縄病院

症状のない疾患も発見

2009年の統計によりますと、日本人の全死亡は約114万4千人で、死亡原因の第1位を悪性新生物(がん)が占めています(約30%)。以下、心疾患(約16%)、脳血管疾患(約11%)、肺炎(約10%)、老衰(3・4%)の順となっています。悪性新生物の中で死亡率第1位は肺がんで、1年間に約7万人の方がお亡くなりになっています。また第10位を慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎)が占め、呼吸器疾患による死亡は少なくありません。

肺がんによる死亡数は年々増加し続け、1999年には悪性新生物における死亡率第1位となりました。残念ながら、沖縄県は全国に先駆けること、1981年に肺がんが死亡率第1位となり、現在に至っています。加えて、慢性閉塞性肺疾患の死亡率も改善したとはいえ、全国ワースト10です。

男性の肺がんと慢性閉塞性肺疾患の発症に大きく関わっているのが『たばこ』です。沖縄県と医師会は「健康で長寿の沖縄」をめざし、生活習慣病対策とともにたばこ対策にも力を注いできました。それでも肺がん死亡は減少していないのが実情です。その原因はたばこと肺がん検診受診率の低下(この10年で30%↓20%)です。病、事故、火事などに共通して言えることは1次予防(起こさないようにすること)と2次予防(初期対応)の大切さです。肺がんの1次予防で最も大切なことは禁煙であることは言うまでもありません。まさに『君子危うき(たばこ)に近寄らず』です。

次に肺がんになりにくい生活習慣です。私たちの疫学研究では、沖縄茶や島豆腐の毎日の摂取が肺がんリスクを減少させていることがわかりました。カテキンやイソフラボンの制がん作用が示唆されました。2次予防とは早期発見・早期治療のことです。肺がんの場合、CT検査で発見されることの多いスリガラス陰影を呈する腺がんや喀痰(かくたん)細胞診で発見されることが多い肺門部早期がんの治療成績は5年生存率90〜100%です。

肺ドックでは(1)肺機能(2)胸部CT(3)喀痰細胞診―を行います。これらの検査では胸部レントゲン検査では見つけにくい肺がんの発見ばかりではなく、肺年齢や閉塞性障害(肺気腫、ぜんそくなど)や拘束性障害(肺線維症、胸膜炎など)がわかります。胸部CT、喀痰細胞診との組み合わせにより症状はなくても「隠れた病」を明るみにしてくれるでしょう。健やかな体を守り、維持するためにも自身はもとより、両親や祖父母へのプレゼントに肺ドックをお勧めしてはいかがでしょうか。