きょうは、国立療養所沖縄愛楽園の現状と今後の課題についてお話ししたいと思います。
みなさん、ハンセン病を知っていますか? ハンセン病に関連する事柄がニュース報道等で取り上げられたり、最近では多くの方が、療養所を訪れていますので、すでに知識をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
ハンセン病は、結核菌と同じ抗酸菌の仲間のらい菌によって、引きおこされる感染症です。治療方法も確立し、一般の医療施設で診察治療できるごく普通の疾患です。現在の日本ではほとんど発症しないと言ってもよいでしょう。
ハンセン病療養所には、過去の偏見差別から社会復帰できずに今でも多くの方が生活の場として暮らしています。
元ハンセン病患者の方々が入所されている国立ハンセン病療養所は、北は青森から南は宮古まで全国に13施設あり、総計2140人(2012年3月現在)の方々が療養生活を送っています。沖縄には、名護市の沖縄愛楽園と宮古島市の宮古南静園があります。当園には、223人の入所者がおり、その平均年齢は81・04歳に達しています。
現在、当園では「入所者・高齢者が安心して生活できる場の提供」を理念に施設運営を行っていて、ハンセン病の治療をもっぱら行っているのではありません。自立している方、介護の必要な方、医療の必要な方など、超高齢化した地域コミュニティーを医療・介護・予防・生活支援の面から包括ケアしている施設といえます。
急速な高齢化が進む日本社会において、問題になりつつある事柄が、すでに超高齢化した、ここ当園では待ったなしの状況で直面しています。認知症の問題、その人らしく生き抜く終末期の問題など、どれも難しい課題ですが避けては通れないことばかりです。
その中の一つに、高齢者がさまざまな要因で食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる問題があります。本人はもちろん、家族や医療・介護にあたるものすべてに大きな悩みの種になっています。
日本老年医学会は今年3月、その問題解決に向けて「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン 人工的水分・栄養補給の導入を中心として」を公表しました。当園でも、多職種参加によるライフサポートチームを立ち上げ、施設全体でこの問題に取り組み始めたところです。
高齢者ケアの問題は、真剣に考える時期に来ています。みなさんもご家族で話し合ってみてください。