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肥満対策は社会全体で(2012年5月29日掲載)

稲嶺 進・中頭病院

BMI知って早期予防

皆さんはBMI(ビーエムアイ)という言葉を聞いたことがありますか?

これはBody Mass Indexの頭文字をとったもので「体格指数」などと訳されます。これは肥満度を簡便に知るための指標で「体重」と「身長」さえ分かれば導き出せるため肥満度を表す指標として世界中で広く用いられていてBMI=【体重キログラム】÷【身長メートル】÷【身長メートル】で計算されます。計算する際には身長の単位をセンチではなくメートルにするように注意しましょう。

例えば体重64キロ、身長160センチならばBMI=64÷1・6÷1・6=25でBMIは25という値になります。

日本肥満学会はBMI18から24を正常、25から29を1度肥満、30から34を2度肥満、35から39を3度肥満、40以上を4度肥満としています。BMIが40を超えると肥満が原因で生命に危機を及ぼす確率が極めて高くなることが知られていて、BMIが40を超える場合を特別に「病的肥満」と区別しています。

しかもいったん病的肥満まで体重が増加してしまうと食事療法、運動療法を行ってもなかなか正常には戻らないことが知られています。

そのため「病的肥満」に対する手術療法が世界中で急激に増加しています。世界では登録されているだけで年間40万件あまりですが国内ではあまり認知されていないこともあり昨年はわずか160件あまりでした。

ガストリックバイパスなどを代表とする肥満手術は脂肪吸引などの美容を目的としたものとは手術の目的も方法も効果も異なり肥満に随伴した、糖尿病、高血圧、高脂血症、睡眠時無呼吸などを高い確率で改善させることが科学的に証明されています。

しかし、手術療法は効果的ではありますが、あくまでも最終手段であり他の疾患と同じように予防、または早期治療が重要であることは間違いありません。

「肥満」は「喫煙」と同じように多くの病気の原因となります。喫煙は肺がんや肺気腫などで個人を苦しめるばかりか、その莫大(ばくだい)な医療費により社会全体の富を浪費します。肥満も同様で糖尿病、高血圧、高脂血症、睡眠時無呼吸、狭心症、腎不全などの悪の連鎖の頂点にあり重要です。肥満は決して個人の問題ではありません。

増え続ける肥満とその合併症をどう予防するかは医療者だけでなく社会全体で対策を立てなければならないほど複雑な問題です。

ちょっと太ったかな? と思ったらまず、BMIを計算してみましょう。病院を受診される際は、血圧だけでなく「私のBMIはいくらになりますか」と担当医にたずねてみるのもいいかもしれませんね。