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心臓リハビリ(2012年5月22日掲載)

上原 裕規・浦添総合病院

積極活用で死亡率改善

リハビリテーションってご存じでしょうか。リハビリテーションの語源はラテン語で、re(再び)+ habilis(適した)、すなわち「再び適した状態になること」「本来あるべき状態への回復」などの意味を持ちます。世界保健機関(WHO)では「能力低下やその状態を改善し、障害者の社会的統合を達成するための手段」と定義されています。

医療にかかわるリハビリを医学的リハビリと言いますが、その中でも、最近注目を集めているのが、心疾患の患者さんを対象に社会復帰を早期に促すために行われる「心臓リハビリ(以下心リハと略します)」なのです。以前は、社会復帰させるためだけの短期的な介入としか認識されていませんでしたが、最近では、その多面的効果により、心疾患患者の予後と生活の質の改善を目指す長期的介入と位置付けられています。

ひと昔前までは、心筋梗塞の合併症を恐れるあまり、発症から6〜8週間もベッド上での安静が必要とされていましたが、最近では早期に離床しても心事故や死亡などが増加しないことが明らかにされ、入院期間は約1〜2週間にまで短縮しています。

積極的な心リハへの参加により心筋梗塞後の死亡率が低下することが報告されており、心筋梗塞後に心リハ施行群と非施行群に分けて経過を観察した研究によると、心リハを施行した群では非施行群に比して、再発率死亡率ともに、改善し、一般住民と全く変わらない生存率であったという驚くべき結果でした。

心リハは、具体的には、動脈硬化抑制による再発予防や自律神経のバランスを整える働き、メタボリックを改善する効果があるとされています。心臓が悪いから運動を制限するのではなく、適切な管理下のもとで心リハを行えば、安全かつ有用なので、積極的に活用すべきなのです。今や心リハは、運動療法だけでなく、心理的カウンセリングや病気に関する教育、食事や行動面での生活指導なども加えられ、多面的に回復をサポートする包括的心臓リハビリが行われております。心リハに積極的に取り組む施設は、全国でも400程度ほどしかなく、県内では数施設しかないのが現状ですが、今後は盛んになっていくものと思われます。

心リハを行うことで、病気をする前より、かえって健康な体づくりができたという患者さんも少なくないので、心疾患をもつ患者さんは、これを機に運動の重要性を再認識してみてはいかがでしょうか。