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アルコールの有毒性(2012年5月8日掲載)

マツモト ノリス ヨシヒコ・アドベンチスト・メディカル・センター

飲酒関連 死因の4%

わが国ではアルコールの飲みすぎが良くないことは、常識としてよく知られています。しかし、アルコールの有害性については認識が薄いのが現状です。

2004年にWHOがまとめた報告によると「世界で250万人がアルコールに関連した原因で死亡した」と報告されています。世界の死因の約4%を占めその数はエイズ、結核よりも多く、インドやアフリカ、アジアの人口の多い地域では収入増加に伴い多量飲酒が問題となっています。

アルコールが起因する身体的疾患としては肝硬変、逆流性食道炎、高中性脂肪血症、高血圧、脳血管障害、肥満、免疫低下による感染症やがん発症のリスク上昇などがあり、米国で7000人の女性を対象に飲酒と乳がんの関連性を調べる研究で、アルコール摂取量の多い人は全く飲まない人に比べ1・75倍の乳がん発生リスクがあることがわかっています。

そして、女性の方がホルモンの関係で酒の害を受けやすく、依存になりやすいと考えられ、酒を習慣的に飲み始めてから依存症になるまでの平均年数が、男性は20年なのに比べて女性は10年未満と約半分(肝臓疾患も同様に満たない)という統計もあります。

依存になりやすいのは、(1)飲んでも赤くならず二日酔いしにくい(アセトアルデヒドの分解能力が高い)(2)気持ちよい酔いが味わえる(脳のアルコールへの感受性が高い人)に当てはまる人たちです。この体質は遺伝するので、家系に「大酒飲」がいる場合は飲酒の習慣を付けない事で依存の予防ができます。皆さんの家族や親せきは、いかがですか?

また、アルコールが原因で社会にマイナス影響を与えていることも否定できません。沖縄の飲酒運転による人身事故は22年連続ワースト1位で、その他、転落事故、暴力性犯罪(DV)、うつ、自殺、二日酔いによる生産性の低下など、意外とアルコールがからむマイナス要因は多いのです。

「適量ならいいでしょう」と言われますが、問題の「適量」は、純アルコールにして40〜50グラム、ビール中瓶では1〜2本、泡盛では1〜2合で週に2日間は休肝日をもてば体への負担は少し軽減されます。さて、嗜好(しこう)性のあるアルコールをどこまで「適量」でキープできるでしょうか。いつのまにか「ほろ酔い状態」が基準となり以前より多くなる場合も少なくありません。意志をコントロールできないのであれば最も良いのは「禁酒」です。

県民は沖縄の素晴らしい文化である健康長寿を継承するためにも強い意志と責任のある行動が求められているのです。