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放射線診断医とは?(2012年4月10日掲載)

宜保 慎司・浦添総合病院

画像から最適治療導く

私は「放射線診断医」です。と言っても、多くの方はご存じないでしょう。「エックス線の機械を動かす人?」それは放射線技師です。「放射線治療をする人?」それは放射線治療医です。

私たちはコンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)を持つ病院に所属していることがあり、撮影された写真に何が写っているかを指摘し、主治医に報告することを主な業務にしています。だから患者さんの前に現れることはあまりありません。

「写真なんてどの科の医者が見てもよいのでは?」と思われるかもしれません。しかし例えば、胸のエックス線写真は1枚か2枚ですが、胸のCTはたくさんの輪切りの画像が出てきます。病院によっても異なりますが、少なくとも30〜50枚、数百枚ということもあります。それも一人や二人ではありません。写真を見る専門の医師が配置される必要性はご理解いただけるかと思います。

また主治医の専門外の領域にも目を光らせます。例えばおなかのCTには肺の一部が写っていることがあり、そこに病気があるのを消化器科に伝えたり、骨折などを調べようとして撮影された写真に偶然、がんの疑いがある所見があれば整形外科に伝えたりしています。そのため、私たちが写真を見ることは通常よりきちんと写真を管理しているとして、診療報酬を少し高くいただいています。

医師の間でも私たちは「写真だけで診断する医師」というイメージがあるようですが、実際には過去の画像や血液検査など画像以外のデータ、カルテに書かれた病気の経過などを参照します。患者さんの体を直接見たり触れたりすることもあります(そのときは自己紹介もしますが、おそらく放射線診断医だとは気づかれていないでしょう)。なぜなら私たちの使命は「診断する」だけではなく、「画像検査にかかわる患者さんの利益を、最小限の負担で最大限に引き出すこと」だからです。

検査そのものは放射線被ばくや、副作用のリスクがある造影剤の使用などもあり、患者さんを傷つける行為です。それでお金までいただくのです。撮った写真を見るだけなんてもったいない!

検査の前に最適な検査部位、撮影法を選択するだけでなく、例えばCTの依頼に対しMRIの方が有利なことがあればそれを伝えたり、時には検査があまりに頻繁に行われている場合、撮影そのものを再考するよう意見することもあります。

認知度の低さもあってか、なり手が少ない診療科です。この機会に、こんな医者もいるのかとみなさんの認識が深まれば幸いです。