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切らずに治すいぼ痔(2012年4月3日掲載)

當山 鉄男・中頭病院

直接注射で痛み少なく

痔(じ)の手術は、ものすごく痛く、入院も長いと思っている方が大勢いらっしゃると思いますが、それはもう昔の話です。切らずに治す、痛くない痔の治療法があるってことをご存じですか?今回は、その切らずに治す、痛くない痔の治療法「アルタ療法」をご紹介したいと思います。

アルタ療法とは、新しい痔核硬化剤「ジオン注」を、痔に直接注射することで、痔を小さくして、脱出や出血をなくす治療法です。これまでの手術(結紮(けっさつ)切除術)に比べ、術後の痛みが少なく、入院期間も短縮できるので、最近では、日本全国で盛んに行われるようになってきました。

主成分は硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸で、痔核とその周辺に硬化剤「ジオン注」を直接注射することで、痔核に炎症をおこし、たるんだ粘膜を繊維化させ、栄養動脈をつぶすことで、痔核を硬化、退縮させます。効果は、早ければ注射している最中からすぐに認められ、約1カ月程度で痔が小さくなり、その後、6カ月間かけてさらに硬化が進み、脱出や出血がなくなります。

アルタ療法は局所麻酔で日帰り(外来)で行う方法と、腰椎(ようつい)麻酔下に短期入院で行う方法のどちらか御希望の麻酔法を選んで行うことができます。腰椎麻酔では、1泊2日の入院を必要としますが、退院後すぐ元の生活にもどれるので、患者さんの満足度も高い治療法となっています。

一方、アルタ療法は手術と比べて再発率が高い(手術・約3%、アルタ療法・約10%)のが欠点とされていますが、過去に痔の手術を受けた方が、再発してアルタ療法を受けた場合の感動は強烈で、「夢みたい、こんな楽に治るのだったら、もっと早く治療を受ければ良かった」と皆、声をそろえて言われます。

しかし、残念ながらすべての痔の方に有用な治療法ではありません。痔に正確に注射するには、技術(4段階注射法)を必要としますので、肛門(こうもん)を専門にしている医師の中で、アルタ療法の講習を受けた医師にしか施行できません。(アルタ療法ができる施設と医師は内痔核治療法研究会のWebサイトにあります)

あなたのまわりにもきっと同じ悩みを持つ仲間がたくさんいるはずです。あまり気に病まずに、気軽に受診をしてみてはどうでしょうか? 

どの段階の痔核であっても、最終的な治療法の決定権は、あなた自身にありますので、主治医とよく相談して、納得のいく方法を選びましょう。