沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2012年掲載分 > 人工股間節置換術

人工股間節置換術(2012年3月20日掲載)

山内 裕樹・同仁病院

「ゆるみ」定期チェックを

股(こ)関節ってどんな関節がご存じですか?

骨盤と脚をつなぐ関節です。日本では股関節が悪い人はひざほど多くはありませんが、悪くなるととても困る関節の一つです。

靴下の着脱、足のつめ切りがしづらくなることに始まり、足を引きずったり、ひどくなると歩いたり座ったりするのも、困難になります。さらに脚の根っこですから、ひざや足首だけでなく、背骨にも影響を及ぼすことがあります。

お薬やリハビリで対応できることもありますが、それだけで駄目な場合には手術を要します。

ご高齢で股関節が悪い方は、人工物に取り換える手術をすることがあります。これが人工股関節置換術です。

人工股関節の大きな欠点としては、脱臼と耐用年数が挙げられます。この分野の最近の発展は目覚ましいものがあり、脱臼は最新の手術方法や器材を使うことで大幅に回避できるようになりました。

また耐用年数も器材の発展によりとてもよくなっています。しかしながら現存するどんな器材も、やはり永遠にもつわけではありません。現在は平均15年くらいもつだろうと言われています。

では15年たつとどうなってくるのでしょうか?

骨とくっついていた金具が、だんだん「ゆるみ」を起こしてきます。ゆるんできた当初は全く自覚症状がないことも多いのですが、これがくせものです。

本人は、痛みもないし全然問題なし!と思っていても、知らず知らずの間にゆるみが進行して、いざ症状が出てきたときには手遅れ、なんていうことも少なくありません。本当に手遅れの場合には、専門医でも手を出しかねるほどひどい状況になっていることもあります。

反対にきちんとチェックを受けて、適切な時期に再置換術をすれば、手術自体もさほど大きくない手術で済みます。これは大腿(だいたい)骨の骨折に対して行う人工骨頭置換術や、ひざの変形に対する人工ひざ関節も含めて人工関節ならすべて共通のお話です。

人工関節を手術する専門医はその怖さを知っていますので、必ず定期的なチェックをしています。言い換えると、人工関節を受けた患者さんと、手術をした医師は一生のお付き合いをすることになるわけです。

もしも人工股関節の手術を受けることになった時には、金具の定期的なチェックをしてくれるのか、脱臼は大丈夫なのか、ぜひ担当の先生に確認してみてください。

またすでに人工関節の手術を受けた方で、万が一にも定期受診をしていない方は早めにチェックを受けるようにしましょう。