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橋本病(2012年2月28日掲載)

幸喜 毅・名嘉村クリニック

女性に多い甲状腺異常

原発事故の後から、甲状腺の話を聞く機会が多いと思います。甲状腺とはどんなものか、甲状腺の病気の一つ、橋本病についてお話します。

まず甲状腺はどこにあるのか?喉仏の少し下の方に蝶々(ちょうちょう)が羽を広げたような形で広がっています。大きさはモンシロチョウぐらいですが、腫れてなければ普通に触っても分かりにくい臓器です。そこから甲状腺ホルモンを出しています。甲状腺ホルモンは、エネルギーを調整するホルモンで不足すると疲れやすく、多すぎると24時間ジョギングしているようにきつくなってきます。

甲状腺の病気で有名なのは、橋本病とバセドウ病です。前者がエネルギー不足、後者が過剰で、自分の免疫力が原因で甲状腺に炎症を起こしたり刺激をしたりするのです。診断は血液検査と超音波検査ですぐに分かりますので、最近疲れやすいなと思ったら一度調べてもらうとよいでしょう。

橋本病は、1912年に橋本策博士が論文発表をしてその名前がつきました。世界中で橋本病として通じる、日本人の名前のついた最も有名な病気の一つと言えます。

病気について少し詳しく述べると、他の症状として、食欲低下、寒がり、体重増加、脈が遅い、低血圧、便秘、むくみ、かすれ声、脱毛、乾燥肌、生理不順などがあります。

女性の10人に1人がこの病気をもっていますが、橋本病と診断されてもほとんどは軽くて様子を見るだけでよく、薬で治療が必要なのは診断されたうちの1割くらいです。

ただし、必要なのに治療しないと、先ほどの症状がひどくなるだけでなく、心不全や意識障害で救急室に運ばれることにもなりかねません。まれですが認知症や精神疾患と間違われることもあります。若い女性の場合は不妊症や流産しやすくなりますし、妊娠しても胎児の骨や神経・脳の発達に影響するので、妊娠の可能性があるのならきちんと検査や治療を受けることが勧められています。

気をつけることとして、海藻類の取りすぎがあげられます。甲状腺ホルモンの原料、ヨードは海藻類に多く含まれ、大量に毎日食べるとホルモン生成に影響することがあるからです。特に昆布はヨード含有量が多いので、食べることの多い沖縄では注意が必要かもしれません。

また、橋本病のような免疫の病気だけでなく、多くの病気がストレスと関係あることが分かっています。病気の予防や悪化防止のためにストレスをためないようにしましょう。