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乳がんのお話(2012年2月14日掲載)

玉城 研太朗・那覇西クリニック

早期発見へ ぜひ検診を

みなさんは乳がんに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか? 「胸にしこり、ころころ触れる」「痛そう」「がんなのでとても怖い病気」といった声を多く聞きます。私の乳がんに対するイメージは「乳がんは多彩な病気である」です。

乳がんと一言で言いますが、時代がたつにつれ、研究が進むにつれ、乳がんが多彩な病気であることが次第に分かってきました。ギザギザの形をした腫瘍、まるっこい腫瘍、石灰化として見えてくる乳がんもあります。

顕微鏡レベルで見てみますと、砂をばらまいたように、がん細胞がぱらぱらと散在しているような乳がんや、小さくてもがん細胞が緊満しているような乳がんなどがあります。

さらに個々のがん細胞を見てみますと、形状不整で核分裂を認めるような細胞(われわれの世界では顔つきが悪いと表現したりもします)や、均質で悪性度の低いがん細胞(おとなしいがんと表現することもあります)などさまざまです。

これらの検査を踏まえて、手術、化学療法、内分泌療法、放射線療法などの治療法を決定するのです。

乳がんは腫瘍の大きさやリンパ節への転移、遠隔転移などの程度によってステージ0からステージ4まで分類されます。

ステージ0は非浸潤がん、ステージ1は小さい腫瘍でわきの下のリンパ節に転移がない乳がんでここまでは早期のがんに分類され、予後(命のリスク)も比較的良好です。

ステージが進むにつれ予後不良になります。とは言いましても、乳がんの場合はステージが高くても薬物療法が非常によく効く乳がんも数多く存在し、決して悲観的になる必要はありません。

乳がん薬物療法の進歩は目覚ましいものがあり、特に今世紀に入ってからは新規抗がん剤、ホルモン剤に加え、分子標的治療薬などの新しいお薬がどんどん開発され使えるようになってきました。

その効果に関しても米国で発表された論文、あるいはわれわれの研究グループの結果でも、時代の変遷とともに予後の著しい改善が認められ、今後の新規抗腫瘍薬の開発とさらなる予後改善効果を期待したいところであります。

乳がんと一言では言いますが、非常に多彩な疾患です。腫瘍特性をとらえ、個人個人に適した治療法(テーラーメイド医療)がますます重要になってきます。

しかしながら早期発見、早期治療が、乳がん予後改善のもっとも基本となる部分です。みなさんぜひ、乳がん検診を受診しましょう。