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うつ病について(2012年2月7日掲載)

仲本 政雄・博愛病院

回復へ無理せず急がず

街には冷たい木枯らしが吹きすさび、枯れ葉が舞い散るメランコリックな季節となりました。こんな季節には、誰しも憂うつな気持ちに陥りやすいものですが、特に、身近な人を失ったり、3・11のように災害時に一瞬のうちに大事な蓄財を失ったり、はたまた、かわいがっていたペットを亡くした時でさえ、多くの人がひどく悲しみ落ち込むものです。

大方の人は、皆、一生のうちに何度かうつ状態になります。

お札の肖像になった夏目漱石、新渡戸稲造。最近の有名人では、精神家で作家の北杜夫、芸能人の高島忠雄、児玉清が、外国では、かのダーウィン、ゲーテ等、うつ病で有名です。

特に日ごろより、対象(人、地位、名誉、財産等)への思い入れの強い人ほどその喪失体験が深い心の痛手となって、うつ状態に陥ることはよく知られているところです。几帳面(きちょうめん)、生真面目(きまじめ)、愛情深い人ほどうつになりやすいようです。

「うつ」はこのように、誰でもかかる病ですので、ひところは「心の風邪」とさえ例えられたものです。しかし風邪はほとんど1〜2週間で治りますが、「うつ病」は結構時間がかかります。それに、その苦しみはほとんどの人が「死んだ方がまし!」と述懐するくらいつらいものがあります。

根がまじめなだけに、過去の些細(ささい)な失敗や過ちを取り返しのつかない大変な過ちを犯してしまったと後悔ばかりしたり、未来にも希望をなくし、絶望の果てに自殺を企図したりするものです。

「うつ」は長期療養が必要なことや回復を焦って無理して復職した時に再発しやすい事があります。復職後も当面は無理しないことが肝要です。

復職して2年余りも頑張っておられる方がこんな言葉を教えてくれました。

短い人生、何をそんなに死に急ぐことがありましょう。急がず、焦らず、くさらず、ゆっくりと行きますよ! と…。アフガン、ソマリアの悲惨な人々を思えば、命があるだけでも幸せと思いたいものです。

そんなつらい病ではありますが、現在では多くの抗うつ薬が開発されており、認知行動療法等の精神療法と併せれば、ほとんどのうつが必ず良くなるものです。(もちろん、死んでしまったら治りようもありませんが…)

どんな病気もそうですが、早期発見、早期治療が肝心です。不眠、疲労感、意欲の減退、憂うつ感、自律神経失調症(不定愁訴)、うつ状態等みられたら早期に専門医(精神科)を受診することです。