お母さん方から、「風邪をひいて薬を飲みたいのですが母乳に出るから我慢しています」などと相談を受けることがあります。
薬それぞれの説明書の実に7割には、薬を内服したら授乳はしてはいけないと書かれています。けれども実際に母親が薬を飲んで、赤ちゃんに影響が出るため授乳してはいけないとはっきりと分かっている薬は抗がん剤や放射性同位元素などの特殊な薬に限られていて、通常使う痛み止め、風邪薬、抗生剤やかゆみ止め等々のお薬を飲んで授乳しても、赤ちゃんには影響がないことが分かっています。
また、薬を飲んでいる間おっぱいをあげないとすると、お母さんは体調が悪いのにおっぱいをしぼらないといけません。もしおっぱいをしぼらずに授乳をやめてしまうと、おっぱいは3日でほとんど出なくなってしまうのです。ですから、おっぱいはぜひ続けた方がよいです。
お母さんが熱を出したとき、おっぱいをあげて大丈夫かと心配される方もいますが、お母さんの風邪のウイルスに赤ちゃんはさらされているので、しっかりおっぱいをあげた方が母乳の免疫力で赤ちゃんの体は守られます。
お酒についてですが、妊娠中はずっと赤ちゃんのためにお酒を飲むのを我慢していたので、少しでもいいからお酒を飲みたーい! というお母さんもいるかと思います。
コップでワイン1杯、ビール2杯くらいなら赤ちゃんには大きな影響はないことが分かっています。
ただ、もともとあまり飲めない人は控えめにしましょう。また、アルコールは2時間くらいで代謝されるのでおっぱいを飲ませた直後に飲んだ方がより影響は少ないでしょう。
たばこですが、喫煙をやめられないお母さんが赤ちゃんのために母乳がたばこで汚染されていることを心配して授乳をやめてしまう方がいます。
でも受動喫煙によって赤ちゃんは、中耳炎、気管支炎、ぜんそく、知能の遅れ、身長の伸びの悪さ、将来がんにかかりやすいなどたくさんの健康上の問題にさらされることになります。
そこで母乳までやめてしまうと、赤ちゃんはさまざまな病気にかかりにくくなり、知能指数(IQ)もよりよくなるという母乳のメリットがもらえなくなってしまいます。1人でやめられない場合には禁煙外来なども利用して1日でも早くやめた方がよいですが、たばこを吸うお母さんの場合でも母乳育児を続けることが大切なのです。
授乳は体力がいるものですが、体調を整えながら少しでも長く赤ちゃんにおっぱいをあげたいものだと思います。