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禁煙のすすめ(2012年1月10日掲載)

比嘉 基・県立南部医療センター・こども医療センター

積極推進で医療費抑制

野田政権が発足して間もなく、小宮山洋子厚生労働大臣が口にしたたばこ税の増税に関する話が出ていましたが、私はこのニュースを見てそう悪い話ではないなと職業柄思いました。

日本にはたばこによって引き起こされる病気がまん延しています。

肺気腫や慢性気管支炎あるいは慢性閉塞(へいそく)性肺疾患COPD(肺気腫+慢性気管支炎)という病名を聞いたことはありませんか。最近、某芸能人が「私もCOPDと診断されて、禁煙しました」と話しているコマーシャルを見たことがある人もいると思います。COPDとは分かりやすく言うと「たばこ肺」、つまりたばこの煙が原因で発症する病気です。

現在、日本にはCOPDの患者さんがおよそ530万人いると推定されており、今後もCOPDによる死亡率が上昇すると予測されています。ちなみに2010年度のCOPDの死亡者数は1万6293人で、死因全体の9位に浮上してきています(09年度は10位)。また、08年のCOPDに対する医療費は1678億円でした。

ほかにも、たばこによって引き起こされる病気としてよく知られているのは肺がんです。10年の死因のトップは悪性新生物でその悪性新生物の中では肺がんが6万9813人でトップでした。

また、肺の病気に限らず、たばこによって引き起こされる病気としては心筋梗塞などの虚血性心疾患や脳梗塞などの脳血管障害が挙げられます。1960年ごろ以降から三大死因として悪性新生物、心疾患、脳血管疾患が占めていますが、これら疾患の主要因としてたばこの害が指摘されています。

たばこが原因で引き起こされる病気の患者数や死亡者数が増大して、膨大な医療費がかかるのであれば、禁煙を推進していくことは現在の日本の財政難の時期こそ必要ではないかと思います。愛煙家の方々には耳の痛い話になったと思いますが、最近ではニコチンガムやニコチンパッチだけでなく、飲み薬の禁煙補助薬も登場していますので、禁煙外来なども利用しながら、真剣に禁煙に取り組んでください。