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運動のすすめ(2011年12月20日掲載)

石川 清和・今帰仁診療所

脳を活性 集中力アップ

運動にはさまざまな効果がある。1990年代アメリカのイリノイ州ネーパービルの高校での「新しい体育の授業」を通して、運動が生徒を変えた取り組みが報告された。

まず、運動の強度は生徒一人一人で、見た目とは異なることが分かってきた。運動時に心拍数をモニターすることで、スリムな体形でも運動が苦手な生徒は走るスピードが遅く、だらだら走っているように見えても最大心拍数(220引く年齢)に達していた(つまり本人は一生懸命走っていた)。

また運動は生徒の集中力を増し、学習意欲を高め、記憶力を強化した。実際、数年後に参加した国際数学・理科教育動向調査で、ネーパービルの生徒は理科で1位、数学で6位と優秀な成績を修めた。

運動は脳由来神経栄養因子、インスリン様成長因子、繊維芽細胞成長因子、血管内皮成長因子等の脳を活性化するタンパク質を増加させ、脳の神経細胞の新生を促し、神経細胞同士の接続や脳の血流を増やす効果があることが分かってきた。

さらにドーパミン、カテコールアミン、セロトニン等の神経伝達物質を増加、あるいは調整することで、満足感・意欲・集中力を増加させている。最近では運動がストレスを発散し、気分を落ち着かせ、不安・うつ状態を改善し、注意欠陥障害児の注意力を改善し、アルコール依存症・肥満症(食物依存)等の依存の強さを減らすなどさまざまな効果が分かってきた。

最も大切なのは認知症を改善もしくは予防する効果である。高齢になると脳の細胞が減少し、神経細胞同士のつながり(シナプス)も減少して物忘れ、計算力の低下、さらには意欲が低下し家にこもり認知症が進んでいく。運動は神経細胞新生を促し、神経細胞同士の情報伝達物質を増加調整することで、認知症の進行を予防、改善する。

運動としては週に2〜3回、20〜30分歩くだけでもいいが、毎日20〜30分以上歩くこと、さらにはバランスボール、バドミントン等複雑な動きを伴う運動のほうがより効果的に脳由来神経栄養因子を増やすことが分かっている。

また一人で運動するよりも集団で運動した方がより早く運動の効果が出てくるが、一人で運動しても毎日続けると同じような効果が出る。

現代のわれわれはあまりにも動かなくなっている。それが、肥満、糖尿病、高血圧等の生活習慣病を増やし、脳卒中、心筋梗塞、がんの死亡率を押し上げている。

時間がないという前に、まずはラジオ体操から始めてみませんか?