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シガテラ中毒(2011年12月6日掲載)

宮城 剛・みんなのクリニック

毒もつ魚 同一種でも差

ガテラという言葉を耳にしたことがありませんか。シガテラ中毒は熱帯や亜熱帯地域で魚を食べ発症し被害者数では世界最大級ともいわれるものです。日本でも沖縄や奄美大島などでは昔から知られていて、近年本州でも発生の報告があるようです。魚を毒化するプランクトンの生息域が温暖化による海水温上昇などで広がったとも言われています。

シガテラ中毒の原因となるプランクトンは、水温上昇や沿岸開発でサンゴが死滅した後、大量発生することがわかっています。

魚体に蓄積されたシガトキシンが中毒の主因と言われていて、毒は冷凍や加熱でも分解されません。県内ではバラフエダイ(方言名・アカナー)、バラハタ(ナガジューミーバイ)、カマス(カマサー)、イシガキダイ(ガラサーミーバイ)など中毒例の報告があります。

シガテラ中毒の症状は、手足、口の周りの感覚異常、めまい、運動失調などの神経障害を主とし下痢、腹痛、関節痛などが見られます。この中毒最大の特徴は、ドライアイスセンセーションと言って冷たさに対する感覚がドライアイスに接触し凍傷にかかったかのような感覚になる温度感覚異常です。

私の知人の話で、魚を食べた後に、家族に口のしびれる症状が現れたという方がいました。私はこの話を聞いて「アリ、シガテラ」と叫んでしまいました。

親せきが県内の離島から送られてきたアカナーを2日間冷凍した後自然解凍し家族5人でいただいたそうです。2人は食後2〜3時間後にのどのヒリヒリ感がはじまり、約5時間後に下肢の筋肉痛、食後6時間後に嘔心、腹痛、水様便があり、その後強い倦怠(けんたい)感のため救急車を要請し入院となったそうです。1人は舌のヒリヒリ感と下肢の強い筋肉痛を認め翌日病院受診し点滴で回復しました。1人は翌日から、舌のヒリヒリ感、冷や汗、倦怠感、腹痛、水様便がありましたが自宅で3日間安静にして回復したようです。そしてもう1人は2日後下肢の筋肉痛のみで症状は軽くすんだようです。

毒の有無については、同一魚種でも地域差や個体差があるとされていて毒をもつ魚を外見から見分けることはできません。沖縄地方にはシガテラ毒の有無に関する言い伝えがあります。「冷凍保存すると毒はなくなる」「やせた魚は有毒である」「黒ずんだアカナーは有毒である」などですが、沖縄県衛生環境研究所はそれらについて検証し、すべて否定的だとしています。

皆さん魚を食べた後の口、舌のしびれなどあれば、早めに医療機関への受診をお勧めします。