沖縄県医師会 > 健康の話 > 命ぐすい・耳ぐすい > 命ぐすい・耳ぐすい2011年掲載分 > 心臓検査のススメ

心臓検査のススメ(2011年11月29日掲載)

比嘉 健一郎・中部徳洲会病院

心筋梗塞を早期発見

「沖縄クライシス」という言葉をご存じでしょうか。戦前から長寿県の代名詞的存在であった沖縄県ですが、県民男性の平均寿命が2000年に26位にまで急降下した事に衝撃を受け、クライシス(危機)と表現されました。「26ショック」とも呼ばれています。

他県よりも10年早くファストフード店がオープンするなど食の欧米化が進んだ事や、車社会のため歩く習慣がないことも影響しているといわれています。

県民男性のメタボリック症候群割合は60%と全国と比較して突出しており、男性2人に1人が肥満という驚きのデータも発表されました。

県民男性でも65歳以上の平均余命は良いのですが、ライフスタイルの変化に大きく影響を受けた中年以下の男性が短命化傾向となっています。その死因の一つとして心筋梗塞が大きく関与している事も分析されています。

心筋梗塞とは、動脈硬化により心臓の筋肉(心筋)への酸素供給が不十分となり心筋が壊死(えし)してしまう病気です。その心筋への酸素供給を担当しているのが冠動脈です。冠動脈の動脈硬化を進行させるものとして、(1)年齢(男性=45歳以上、女性=55歳以上)(2)高血圧症(3)糖尿病(4)喫煙(5)脂質異常症(6)心疾患の家族歴(7)肥満、が冠動脈危険因子とされており、この因子を数多く有するほど危険度が高くなります。

また、冠動脈の動脈硬化を検査する方法はいくつかありますが、最も確定的な診断をつける検査は心臓カテーテル検査です。1955年に世界で初めての心臓カテーテル検査が行われてから50年以上が経過し、道具や手技のさまざまな改良により検査に伴う苦痛や危険性は著しく軽減されています。

また、冠動脈は心拍動とともに動き続ける3ミリメートルほどの細い血管であるため、これまでCTでの検査は不可能とされていましたが、一度に複数の断層画像を撮影することができるマルチスライスCTの登場により、冠動脈検査で入院の必要がなくなりました。カテーテル検査に比べると解像度は落ちますが、合併症の危険は少なく、しかも低コストです。

胸痛や胸部圧迫感などの典型的な自覚症状は、動脈硬化がかなり進行するまで見られません。前兆のないまま突然心筋梗塞を発症する事もあるため、50歳前後になってメタボリック症候群をはじめとした危険因子を有する際には、積極的に冠動脈を検査する事が大切です。

早期発見、早期治療により心筋梗塞を含めた動脈硬化性疾患の進行を予防し、長寿県沖縄を復活させましょう。