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末期腎不全の治療(2011年11月8日掲載)

与那覇 朝樹・豊見城中央病院

腹膜透析も選択肢に

本邦において腎不全で人工透析を受けている患者は今年の末には30万人に達すると予想されております。国民の約430人に1人は透析患者です。沖縄に限っては県民350人に1人は透析を受けており、残念ながら国内ワーストの透析率を誇ります。腎臓病の早期発見、早期治療は透析導入率を下げるといわれており定期健康診断が重要です。

現在、透析患者の95%は血液透析をしています。週に3回専門の病院へ通院し1回4時間ベッドの上で透析を受けなければなりません。残り5%弱の約1万人が腹膜透析を受けています。腹膜透析は自宅でできて社会復帰が可能な透析療法の一つですが、あまり知られておらず、普及度はまだ低いです。

胃や腸などの内臓を覆っている腹膜は腎臓の代わりになる「ろ過作用」を持っています。おなかにあらかじめ細いカテーテル(管)を埋め込んでおき、約2リットルの透析液をおなかの内側に入れ、通常1日4回入れ替えて腎臓と同じように体にたまった老廃物を除去します。大げさな機械がいらず、自分で透析液のバッグ交換をするため自宅や職場で透析ができます。バック交換は簡単な操作ででき、交換時間も30分以内です。自分で行うため、病院への通院は月に1、2回になります。仕事や趣味などで時間を有効に使いたい人にはうってつけです。

また、毎日24時間ゆっくり透析を行うため、体に対する影響が少なく、合併症を持っている人や体力のない人にも向いています。最大の特徴は、透析開始後も血液透析に比べて長期間尿が出ることです。そこで、透析療法はまず腹膜透析から始め、できるだけ尿量を保ちます。その後、腎機能が減ってきたら(尿量が減少してきたら)、透析量を増やすための治療を考えます。具体的には腹膜透析の回数を増やしたり、血液透析を組み合わせたり、あるいは完全に血液透析や腎移植に移行したりします。

腹膜透析の短所の一つは、個人によって異なりますが5〜8年で腹膜の機能が落ちる点です。そうなると血液透析に移行することになりますが、最近は腹膜機能の劣化を防ぐ中性の新しい透析液が使用され、その機能も延びる可能性があります。

腹膜透析は永久に使用できるものではありませんが、長期的な視点で透析ライフを考え、透析療法を選択することが大切です。主治医または腎臓専門医、透析専門医に一度ご相談し、自分の生活スタイルや将来設計の視点から腎代替療法を選んでみたらいかがでしょうか。