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下肢静脈瘤(2011年11月1日掲載)

池村 綾・中部徳洲会病院

レーザーで日帰り手術

脚にボコボコがありませんか? それは、下肢静脈瘤かもしれません。日本では、下肢静脈瘤(りゅう)の方が、1000万人以上いるといわれ、女性が男性の3倍の頻度で認められます。下肢とは、ももの付け根から足先までをさす医学用語です。下肢静脈瘤は、下肢の静脈が拡張、蛇行し、ボコボコと目立つ状態のことです。これにより、美容的に悪くなったり、だるさ、むくみ、かゆみ、痛みなどが出現します。

また、静脈還流の悪化・うっ滞により、代謝産物がたまり、夜間に脚がつる(こむら返り)等も特徴的な症状です。さらに、血栓性静脈炎、色素沈着、皮膚の硬化、出血、皮膚に難治性潰瘍ができることもあります。最近では、エコノミークラス症候群の危険性も高くなるという報告もあります。

下肢静脈瘤は、過剰な腹圧(妊娠、出産、立ち仕事、メタボリック症候群)や遺伝などにより、下肢静脈内の逆流防止弁が壊れ、血液が逆流することで起こります。脚は、第二の心臓ともいわれ、ふくらはぎの筋肉の収縮運動で血液を心臓へ戻します。その際、静脈内の逆流防止弁が壊れていると、血液が逆流し、静脈が瘤状化し、脚がむくんだりするわけです。

治療には、保存的治療と手術があります。保存的治療には、(1)弾性ストッキングの着用、下肢の挙上や(2)硬化療法という、薬で、静脈瘤を閉鎖させる方法などがあります。手術には、(3)高位結紮(けっさつ)術(縛って切り離す方法、再発することが多い)や(4)ストリッピング手術(腰椎麻酔・全身麻酔を用いて、静脈瘤を引き抜き、取り除く方法)などがあります。

最近では、より体に低侵襲(体に与える影響が少ない)手術として、(5)レーザー手術があります。この方法は、局所麻酔下に静脈内に特殊なファイバーを挿入して行う、血管内治療法です。メリットは、手術に伴う傷がほとんど目立たたず、手術時間が短く、手術当日に帰宅できる(日帰り手術)などが挙げられます。治療効果は、従来のストリッピング手術と比較して、遜色ない結果が得られています。日帰り手術で行え、翌日から通常の生活が送れるこの手術は、大変有益な方法だと思います。

今年の1月から、一部のレーザーファイバーの機器が保険適応となりましたが、依然自費診療の機器が多い状態です。全ての機器が、保険適応となることを願う次第です。医療の進歩に伴い、治療選択の幅がどんどん増えてきました。下肢静脈瘤でお悩みの方は、血管外科で相談してください。