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心房細動(2011年10月11日掲載)

大城 力・翔南病院

重症脳梗塞を招く不整脈

脳梗塞は、脳の血管のつまり「閉塞」によって脳細胞が壊死(えし)に陥る状態です。血管の閉塞する範囲や領域によって、その症状もさまざまです。致命的、寝たきりになるような大きな脳梗塞の半分以上の原因を占めるのが心房細動という不整脈です。心臓は、全身に血液を送るポンプである心室(心臓の下の部屋)と、全身を循環してきた血液が戻ってきて再び心室に血液を送り出す働きをしている心房(心臓の上の部屋)からなっています。

心房細動は、心房がけいれん状態となり、心室の拍動が全くばらばらと不規則になる不整脈です。心房細動では心房の収縮ができなくなるため心房内で血液がよどむことによって血液の塊「血栓」ができ、その血栓が血液の流れに乗って脳などの血管を詰まらせてしまいます。心房細動の症状は、「ドキドキ感」「胸の圧迫感」といった強い自覚症状や、不安感・恐怖感といった心理的・精神的な側面まで悪影響を及ぼし生活の質を大きく低下させます。

しかし、全く自覚症状のない方もいますが、症状の強さに関係なく、重症脳梗塞や、心臓のポンプ機能の悪化(心不全)をきたします。また、進行性であることから、発症初期には自然に停止する「発作性」ですが、いずれは「持続性」「永続性」へと進行します。

心房細動の治療法は、薬物療法と非薬物療法があります。薬物療法は、脳梗塞などの血栓症を予防する抗血栓療法に加え、発作回数そのものを少なくする抗不整脈薬療法があります。しかし、抗不整脈薬の効果は半年から数年であり、心房細動を抑え切ることは困難です。従って、薬物療法は抗血栓療法を続けることが主体となります。

これに対し、非薬物療法には根治が可能な高周波カテーテルアブレーション治療があります。これは細い管を血管から心臓内に誘導し不整脈の発生源となっている部位に対して高周波をあて、病巣を焼き切る(アブレーション)治療法です。発作性心房細動の発生源の多くが心房に注ぎ込む肺静脈と判明しており、アブレーションは肺静脈が出ている心房の周囲に高周波をあてること(電気的肺静脈隔離術)によって遂行されます。手技時間は2〜3時間ほどで、術後3〜5日で退院可能です。

心房細動に対する根治的アブレーションは、より早期の段階での治療効果が高く、慢性化すると再発率が高くなってきます。慢性化しないうちに根治することが重要です。しかし、アブレーションも合併症が起こることもありますので、治療法に関しては不整脈の専門病院でご相談ください。