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肥満の話(2011年9月27日掲載)

萩原 真理・あがりえクリニック

「満腹」ではなく「満足」を

内地から戻って沖縄の街中を歩くと、なんだか太った人が多いなあと感じることが多くなりました。

「何を食べたら、やせるんですか?」。肥満の患者さんに「体重を減らしてください」と言うと、ほとんどの方がこう言います。そこで、「食べる量を減らしてください」と言うと、「そんなことをしたら、おなかが空いて働けなくなります」と答えます。「肥満」ということは、労働で消費するカロリーよりも、ずっと多い量を摂取しているということ、つまり「食べ過ぎ」です。

なぜ、必要以上に食べるのか? 沖縄の人の食事を見ていると、空腹を癒やすためというよりも、とにかく満腹になりたい、満腹となることで幸福感を得たいというように見えます。これは、俗に「ストレス食い」と呼ばれる行為と似ています。

沖縄の人が感じているストレスとは、何でしょうか。エアコンの効いた部屋は快適ですが、閉鎖的で、時として引きこもりを招きます。この引きこもりによる「孤立」が、ストレスになります。それを助長するのがテレビ・携帯・パソコンであり、これらから流される「大量の情報」も、実はストレスとなります。

また、職場の上司や同僚・部下との「人間関係」も、ストレスの原因となるでしょう。そんなストレスを癒やす場であったはずの家庭も、世代間格差や家庭内離婚などでストレスの原因となっています。つまり「人間関係の希薄化・複雑化」がもたらす「心の飢え」が、ストレスの根本にあると考えられます。

しかし、この「心の飢え」は沖縄特有のものではなく、県外の人々も状況は同じはずです。

ではなぜ、沖縄の人に肥満が多いのでしょう。それはこの「心の飢え」を、食べることで満たそうとするからではないでしょうか。しかし、いくら食べても「心の飢え」は癒やされず、肥満になるだけです。

では、「心の飢え」を癒やすにはどうしたらいいでしょう。まずは「心の飢え」の原因を見つけることです。「孤立」に原因があるなら、話し相手を見つけることです。職場や家庭での「人間関係」が原因ならば、利害関係のない友人を相談相手に持つことです。それが難しいなら、趣味を持つことをお勧めします。

特にお勧めなのは、ジョギングや家庭菜園などの体を動かすことです。すると「満腹感」ではなく、「満足感」を得られるでしょう。この「満足感」こそが、「心の飢え」を癒やしてくれるものなのです。

そうして満腹感を得るための「過食」から解放された時、心も体重も軽くなっていることでしょう。