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肺がんCT検診(2011年9月6日掲載)

久手堅 憲史・くばがわ内科クリニック

発見率上昇 費用が壁

現在、日本人の死亡原因の第1位はがんです。沖縄県では2012年4月にがん対策条例が制定され、全県的ながん対策の推進を目指し、対策が行われる運びになりました。沖縄県では肺がんが、全国に比べ高い比率で発生しています。そこで今回は、肺がんについて考えてみます。

現在、肺がんは、いわゆる手遅れの状態になって見つかることがほとんどです。肺がんが起こる危険度が高いとされるのは、多量の喫煙者、家系にがんにかかった人がいる方、呼吸器に自覚症状がある方などです。このような人は、肺がんの発症に注意しなければなりません。

しかし、現在の一般的な肺がん検診の方法は、遅れていると言わざるを得ません。それは、これまでの胸部単純X線検査による検診法では、早期の肺がんを見つけることが困難であるからです。

一方、今年7月欧州で肺がんCT検診により、肺がんの発見率が上がり、肺がんによる死亡率が低下することが証明されました。日本でも近年、肺がんCT検診による成果が、東京や長野県などから報告され、このたび専門学会から、肺がんの検診を行う技能を持つ医師を「肺がんCT検診認定医」と資格を定め、肺がんCT検診を進めていこうという機運が高まっています。

では、このCT検診には、問題点はないでしょうか。一つは検診それ自体がX線を用いることから、検診の目的で受けたX線により、新たながん発生の要因にならないかどうかということです。この点は、大変重要なので、詳しい検討がなされ、検診の結果に差し支えのないぎりぎりまで、X線の線量を低くすることで、解決されました。

もう一つは、肺がん検診が、治療ではなく予防であるため、健康保険の対象とならない点です。CT検査は、比較的高額な検査ですので、自己負担で受けるのは、この不況の時代にはふところに厳しいところです。

ちなみに、東京の例では、肺がん検診は会員制の有料検診として行われています。この高額な会費の問題を解決しなければ、せっかくの肺がんCT検診も多くの人が受けることができないということになってしまいます。

沖縄県がん対策条例に検診への公費助成を加えていただけるように望むところであります。そして、一日も早く肺がんで亡くなる方を減らすことができるように、肺がんCT検診が一般に普及していくことを期待します。