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塩分(2011年8月30日掲載)

桑江 紀子・同仁病院

摂取工夫し新鮮果物を

太古より塩と人類の関係は深く、レニン、アンギオテンシン、アルドステロン系(以後RAA系と略します)と塩は人類が海洋から陸上生活へ進化する際に重要な役割を果たした、とされています。

RAA系とは体の中の「ホルモン」の一種のことで、体の中に塩分や水分を保持し、血圧を維持する役割があります。出血、ショック等で体液を失うとき、交感神経やカテコールアミン等のさまざまな因子が働いて血圧を維持しようとしますが、その因子の一つでもあります。

RAA系と塩分はいわば、主役と脇役の関係であり、協力して働いています。

塩分をたくさん取ると全身のRAA系の働きは、当初は抑えられますが、日常的に塩分過剰な生活を続けると、今度はRAA系が亢進(こうしん)し始め、良い働きをするRAA系が良くない働きをして、高血圧、脳血管障害、心不全、腎機能障害等を引き起こす原因の一つともなるというわけです。

習慣上、塩分を1日1グラム未満しか取らないヤノマモインディアンには、高血圧症はなく、年をとっても高血圧にならないそうです。しかし取らなさすぎも問題で、もしけがをして失血するとき、ヤノマモインディアンは死亡率が高いということもあるようです。

2009年の「Nature Medicine」誌に「Salt gets under your skin」(塩は皮下にたまる)皮下の毛細血管にたまる、という論文が出ましたが、取りすぎた分は、ミクロのレベルでは、少しずつ体の中にたまっていっているとされています。その影響から抜けるのに4カ月もかかった高血圧症例もあるとか。

日本人は1日に平均11から12グラムくらい塩分を取っているといわれています。厚生労働省(05年)の摂取目安は男性で10グラム未満、女性で8グラム未満です。日本高血圧学会(09年)では高血圧の人は6グラムを推奨しています。

減塩を心がけ、新鮮な果物(カリウムが多いもの)をとるなど工夫しましょう。熱中症対策では塩分を含む水分の摂取も必要ですが、取りすぎも取らなすぎもよくないもの。「いい塩梅(あんばい)」に摂取したいものです。