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食物アレルギーの診断(2011年8月23日掲載)

尾辻 健太・沖縄協同病院

信頼高い経口負荷試験

「1歳の時に卵を食べてじんましんが出てから1年たったけど、食べられるようになってるかしら?」「アレルギー検査の値が上がっているから、と卵を食べたことがないまま3歳になったけど、いつまで避けていればいいのかしら?」。例えばこんなとき、どうすればいいのでしょうか? 今日は、食物アレルギーの診断について書いてみたいと思います。

アレルギー検査として一番よく行われているのは、血液検査で食品別の特異的IgEを測る方法です。値が高ければ食べて症状が出る人が多く、低ければ食べても症状が出ない人が多いのですが、実際は値が高くても症状なく食べられる人もいるし、低くても症状が出てしまう人もいます。つまり、「食べてみないと分からない」事が多いのです。

現在の食物アレルギーガイドラインでは、「食物経口負荷試験」が最も信頼のおける検査とされています。難しそうな名前がついていますが、簡単に言うと「アレルギー症状が出るかもしれない食物を病院で食べてみる」というものです。ひどい症状が出たとき、治療までに時間がかかると危険な事もあるので、すぐに治療できる準備をしてから行います。

食物経口負荷試験はとても役に立つ検査ですが、実際行うかどうかは患者さんのこれまでの経過や血液検査の結果を参考にしながら決めていきます。特異的IgEの値が飛びぬけて高い場合や最近実際に食べて症状が出ているような場合は、基本的に負荷試験は行いません。また、値がとても低い場合は自宅で食べ始めてもらうこともあります。

私自身は小さいころから卵アレルギーで、小中学校9年間、周りが給食の中、卵抜きの弁当を持って通いました。親子とも卵除去の生活には慣れましたが、やはり大変でした。大きくなってから偶然、食べても症状が出ないことに気が付きましたが、もし「小さい子の卵アレルギーは食べられるようになることが多い」ということをもっと早く知っていれば…と思ったこともあります。

食物除去を続けることは、お子さんにとって心理的・栄養的な負担になることがありますし、親御さんや園・学校にとって手間がかかる上、気も使います。現在食物アレルギーでお困りの方は、食べられる可能性があるのかどうか、負荷試験の適応があるのかどうか、主治医の先生に相談してみてください。

除去を続けるにしても解除するにしても、お子さんや御家族にとって楽しく安全な食生活が送れるといいですね。