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携帯電話電磁波の発がん性(2011年7月26日掲載)

新城 哲治・西崎病院内科

暴露減らし予防対策

5月31日、世界保健機関(WHO)の組織である“国際がん研究機関”は携帯電話から発せられる電磁波の発がん性について「可能性がある」との分析結果を発表しました。携帯電話を利用すると神経膠腫(こうしゅ)という脳腫瘍(しゅよう)や聴神経腫瘍のリスクが増えるということです。5段階の発がん性の分類のうち、携帯電話の電磁波は上から3番目の「可能性がある」に分類されました。この3番目には鉛、エンジン排気、クロロホルムなども含まれています。一部のマスコミでは「コーヒーと同じグループだから心配ない」としていますが本当にそうでしょうか?

このグループに含まれているクロロホルムは化学工業や大学の実験室でよく使われますが、使用後は専用の容器に保存し、廃棄も決められた方法で行います。このように非常に危険なクロロホルムが電磁波と同じグループであることに留意すべきです。ちなみにコーヒーは膀胱(ぼうこう)がんと関連があるため「可能性がある」に分類されています。WHOがこのような決定をしたのは「少しでも健康に害を及ぼす可能性があるものは早めに注意喚起する」という「予防原則」にのっとったものです。

対策として携帯電話を使用する際には「ハンズフリーセットの使用などで電磁波への暴露を減らすこと」が重要であるとしています。あるメーカーでは「携帯電話ネットワークを使って通話やデータ通信を行う際は本体を体から少なくとも15ミリないし25ミリ離して使うこと」と説明書に明記しています。すでにイギリス、カナダ、ドイツでは「子どもは携帯電話使用を控えるべきである」と勧告しています。

携帯電話の電磁波が発がんの「可能性がある」ならば、携帯電話基地局から発せられる電磁波はどうなるのでしょうか? 携帯電話基地局は常に複数の携帯電話と交信しており、その近くに住む人々は24時間ずっと電磁波を浴び続けることになります。

私はこの携帯電話基地局の電磁波についても健康への影響を心配しています。実際、全国各地で基地局の稼働後、周囲の住民に体調不良が出現した報告が相次いでいます。宮崎県延岡市では健康調査の結果、明らかな症状を認めたため基地局の撤去を求めて裁判も起こっています。

携帯電話基地局の設置に関しても先の「予防原則」にのっとって何らかの対策を講じるべきではないかと私は考えています。