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重複がん(2011年7月19日掲載)

久志 一郎(かずあき)・国立病院機構沖縄病院

併発頻度高い喫煙者

重複がんとは、一人の体の二つ以上の臓器にがんが発生することをいいます。その中でそれぞれのがんが1年以内に発生した場合を同時性重複がん、1年以上経過してから発生した場合を異時性重複がんと定義しています。

近年、がん治療の進歩による生存率(治る確率)の向上、高齢化社会の到来により重複がんも増加しています。がんの発生には、多くの要因がありますが、重複がんにはいくつかの特徴が知られています。高齢者やがん家系の方、ヘビースモーカーなどに多いとされ、がんの単発症例と比べると重複がん症例の治療成績は不良であるとの報告もみられます。肺がん手術症例における他臓器重複がんの発生頻度は、報告では5〜38%で胃がん、甲状腺がん、前立腺がんとの合併頻度が高いとされています。当院で肺がん手術を施行した約960例を調べてみると、胃がんや大腸がんなどの消化管がんと重複した頻度は2・5%(同時性1・5%、異時性1・0%)でした。これらの症例中、同時性と異時性重複がんを比較すると、同時性重複がん患者には喫煙者が多く、治療成績も悪い傾向にありました。これまで世界中で行われた数多くの研究結果からも喫煙は肺がん、喉頭(こうとう)がん、口腔(こうくう)・咽頭(いんとう)がん、食道がん、胃がん、膀胱(ぼうこう)がん、腎盂(じんう)・尿管がん、膵(すい)がんなど多くのがんの危険因子であるとされており、さらに重複がんとの関連も高いと考えられています。

当院で診断された重複がんは、肺がんの術前検査や術後の定期検査で発見され、比較的早期の症例が多く、内視鏡的処置や手術などの治療により長期に生存している患者もみられます。

ある70歳代の患者さんが、肺がんの診断で手術を施行されました。手術後もきちんと通院され、定期的にエックス線やコンピューター断層撮影(CT)、消化管内視鏡など全身の検査を受けていました。肺がん手術から3年後に他の臓器にがんが発見されましたが、早期がんで手術を施行し現在も元気に通院しています。このように、一つのがんを経験した方は、その後も慎重な経過観察が必要であることは、言うまでもありません。

がんを根本的に予防することは困難ですが、定期的な検査を行うことで早期発見、早期治療が可能となります。がんを経験された方々は、常に再発や新たながんの発生が気になる事でしょう。定期的な通院、検査を継続することで、少しでも不安な気持ちを和らげることができればと願っています。