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尿失禁(2011年7月12日掲載)

翁長 朝浩・沖縄協同病院

体操や服薬 手術で治療

尿失禁とは「自分の意思と関係なく、尿が漏れる状態」で、健康な女性にみられる軽いものから、痴呆(ちほう)に伴う尿失禁まで幅広い病気です。

咳(せき)やくしゃみでもおしっこが漏れるので、おしっこの臭いが気になって、外出も控え、旅行も諦め、大きな声で笑うことさえもできないって経験はありませんか? 

しかし、恥ずかしさもあって、なかなか人に相談しにくく、つらい思いをしている人が大勢います。 

わが国では、1993年の調査で、約400万人の尿失禁患者がいると推定されています。

尿失禁は、原因や病気の質によって、(1)腹圧性尿失禁(2)切迫性尿失禁(3)溢流(いつりゅう)性尿失禁(4)機能性尿失禁(5)反射性尿失禁―に分類されています。それぞれ、原因も異なり、治療法も変わってきます。

なかでも、一番多いタイプの尿失禁を「腹圧性尿失禁」といいます。

咳やくしゃみをするとおなかに力が入り、腹圧が高くなりますが、正常であれば、尿道の周りの筋肉も同時にキュッと締まり、尿は漏れません。

しかし、おしっこを我慢する筋肉「尿道括約筋」や靱帯(じんたい)が年齢や出産で緩んだり傷ついたりすると、おしっこが漏れます。

尿失禁が軽ければ、骨盤の筋肉を鍛える骨盤底筋体操で良くなったり、お薬で抑えることができる場合もあります。効果がない場合は、弱った尿道を支える網目状になったテープを使った手術もあります。

ポリプロピレンという身体に良くなじむ繊維で作られたテープを、尿道の下をぐるっとくぐらせて尿道周囲の組織を補強する手術です。おなかを切らずにできる手術で、身体にかかる負担が少ないのが特徴です。

手術後は、テープの網目や周囲に結合組織が付着して、尿道を補強し、おなかに力を入れても尿漏れしにくくなります。下半身の麻酔で、3〜4日ほどの入院ですみます。手術後1カ月は、激しい運動を控えてもらいますが、日常生活に支障はありません。

水を使ったり、水の音を聞くと、急におトイレに行きたくなったり、おしっこが我慢できず、漏れる状態を「切迫性尿失禁」といいます。膀胱(ぼうこう)を支配する神経が過敏になって、勝手に膀胱が収縮することでおしっこが漏れる病気です。

切迫性尿失禁の治療は、薬での治療が主で、手術では治りません。それどころか、切迫性尿失禁に手術をするとかえって悪くなる場合もあります。

腹圧性尿失禁であろうと、切迫性尿失禁であろうと、しっかりした治療法がありますので、勇気を出して泌尿器科を受診してみませんか?