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縦隔腫瘍(2011年6月28日掲載)

石川 清司・国立病院機構沖縄病院

症状少なく診断難しい

縦隔(じゅうかく)とは、あまり耳にしない体の一部の名称です。左右の胸を縦に隔てる「ついたて」の部分をいいます。この部分には、気管や食道、心臓、太い血管、リンパ管、そして神経などの大切な臓器や組織があります。これらの組織から発生し、できた塊のことを腫瘍といい、良性と悪性の腫瘍があります。いろいろな組織があるため、病気の種類も多彩です。

縦隔の前面には胸骨という骨があり、病気が小さい間は、骨に隠されて通常のレントゲン写真では見つかりません。病気が極端に大きくならない限り、症状が出ないことも縦隔の病気の特徴です。検診(健診)で発見されることが多いのですが、痛み、声がかすれる、上半身のむくみなどの他に、貧血や全身の脱力感などの症状が出ることもあります。

縦隔腫瘍の特徴は、病気の種類によってできやすい場所があることと、比較的若い人に極端にたちの悪い病気ができることが挙げられます。胃や腸と異なって、内視鏡検査ができないこともあり、正確な診断をつけることが難しい場所でもあります。発生部位、形、大きさに加えてコンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)検査、時には腫瘍シンチ等によって病気を診断し、急いで手術をすべきか、経過観察でいいのか、あるいは薬の治療や放射線治療を先に行うかの判断をします。

当院において、過去に診断の得られた縦隔腫瘍の概要を表に示しました。胸腺腫、胸腺がん、胚細胞腫瘍等の悪性腫瘍に対しては手術、抗がん剤、放射線治療とその組み合わせが有効です。胸腺嚢胞(のうほう)、心膜(しんまく)嚢胞、気管支性嚢胞などのように、袋状の良性の病気には手術が好ましい病気と経過を見て手術を避けることのできる病気があります。

CTの画像診断の進歩により小さな腫瘍が見つかるようになりました。症状のない、小さな腫瘍は、良性・悪性を問わず、痛みのない、傷の目立たない胸腔(きょうくう)鏡による切除が可能です。