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外反母趾(2011年6月21日掲載)

垣花 隆之・南部病院

痛み改善なければ手術

外反母趾(ぼし)という病気の名前を一度は耳にしたことのある方は多いと思います。しかし外反母趾で足が痛いといって外来に来られる患者さんの中には違う原因で痛みが起こっていることをよく経験します。今回は外反母趾の痛みの特徴と治療方法についてお話ししたいと思います。

外反母趾は他の病気と違って足を見れば医者でなくてもすぐに分かります。足の親指の付け根が「く」の字に曲がり骨が内側に出っ張っています。女性に多く、遺伝性があり、ハイヒールが原因になることが多いといわれています。

症状は「く」の字に曲がった親指の付け根が靴に当たって炎症を起こして痛くなります。そして足先が狭まってくることで、足の親指の付け根から小指の付け根にかけての横方向のアーチがつぶれて足の裏に治りにくいタコができます。さらに進行すると親指がどんどん横から寄ってくるため、居場所がなくなった隣の指が脱臼して上に持ち上がり靴に当たって痛みを生じます。

これ以外の部位に痛みがある場合は他の病気が原因となっている可能性もあるので注意が必要です。また見た目が外反母趾だからといって必ずしも痛かったり、いずれ痛くなると決まっているわけではなく、痛みがない場合には通常は治療の必要はありません。

治療方法は足のストレッチと装具療法が基本となります。一般的な社会人の場合、足の指は手の指と違ってほとんどの時間は窮屈な靴の中に閉じ込められています。長年そのような状況が続くと、足の指を動かす筋肉が弱ってきて変形が進行する原因となるので、意識して足の指を動かすことが大切です。実際には足の指でじゃんけんをする運動や、床に敷いたタオルを足の指で手前に引き寄せる運動を指導しています。すでに痛みが強い場合には痛みを緩和させる目的で靴の中敷きを作って足のバランスを良くしたり足に合った靴を指導します。

これらの治療を行っても痛みが改善しない場合には手術的な治療が適応になります。外反母趾の手術はどの施設でも同じ方法というわけではなく、さまざまな術式があります。基本的には足の甲の部分で骨を切って矯正する骨切り術という方法ですが骨を切る部位、切った骨を何で固定するか、追加して骨を削ったり筋肉や靱帯(じんたい)を切ったりするかの違いです。専門の医師は皆自分のこれまでの経験と知識の中から一番良いと思っている方法で行っていますが、手術を検討する際にはよく担当の先生とお話しして手術のメリットとデメリットをよく理解してから受けられることをお勧めします。