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誤嚥性肺炎(2011年6月14日掲載)

山内 桃子・北部地区医師会病院

飲み込む力低下で誘発

寝たきりのお年寄りや病人がいる家に住んでいる方、医療関係、老人福祉関係の方はご存じでしょうが、そうでない方にとってはなじみの薄い言葉かもしれません。誤嚥(ごえん)性肺炎とは、口の中にたまった唾液や食物が誤って気管・肺に入り生じる肺炎のことで、つまりは、本来、食道へ向かうはずだったものが、行く先を間違えて肺へ行ってしまったことにより、肺が炎上(炎症)してしまう病気です。

症状としては、発熱、咳(せき)、膿性痰(のうせいたん)、むせこみ、嘔吐(おうと)、低酸素血症、意識障害などがあります。脳血管障害、認知症、神経疾患、唾眠薬などの薬剤の影響などで飲み込みの機能や咳反射が落ちたときに起こりやすく、高齢者の肺炎の半数以上がこれといわれています。

誤嚥性肺炎を予防するには、

・食事形態をとろみ食にすること

・食事はできるだけ頭を高くすること

・覚醒した状態で食事をすること

・食事はゆっくり、個人のペースに合わせて

・嚥下(えんげ)のリハビリを行うこと

・運動リハビリを行い、寝たきりにならないこと

・食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎のある患者さんは逆流、嘔吐を来しやすいので腹圧をかけないように注意すること

・ロ腔ケアをまめに行うこと(歯磨きや歯茎のマッサージ)

―などが挙げられます。あとは、自分ではどうにも防ぎようのない病気もありますが、脳梗塞にならないようにできるだけ普段の生活を健康的に過ごすこと、でしょうか。

治療は、抗菌薬の投与となりますが、しょっちゅうむせたり誤嚥したりという患者さんにはACE阻害薬という高血圧で使われる薬や抗血小板薬という脳梗塞や心筋梗塞の患者さんに使われる薬を誤嚥予防に使用することもあります。

誤嚥性肺炎を繰り返していると、体力も落ち、命取りになることもあるので、胃瘻(いろう)や経管栄養を勧めたりすることもありますが、あまり予後に違いがないという報告もあります。昔はモノが食べられなくなったら、それが寿命でした。現代の医学では、経管栄養や胃瘻といった技術によって、直接胃に食べ物を流し込むことができるのです。

それが果たして本人の希望なのかどうか、時として考えさせられてしまいます。皆さんも今後、自分が年を取ってきたらどのように生きたいかを考えて、そうなる前から意思を家族や周りの人たちに知らせておくと良いかもしれませんね。