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巻き爪と爪水虫(2011年5月3日掲載)

新城 憲・形成外科 KC

合併率40% 重症化も

巻き爪とは、爪全体が湾曲した状態を指します。巻きがひどくなると、皮膚へのくい込みが増して痛むこともあります。また、爪の変形はほとんどなくても爪の角が皮膚にくい込んで化膿(かのう)し痛みを伴う場合を、「陥入爪(かんにゅうそう)」と呼びます。いずれも、足の親指(第1趾)によく見られます。

ところで、爪水虫とは水虫菌(白癬菌(はくせんきん))が爪に巣くった状態で、見た目は爪が分厚くなって茶色に混濁・変色しています。悪化すると、爪自体がぼろぼろになってきます。診断のため、爪の濁った部分を削って水虫菌がいないか顕微鏡で調べてみると、爪水虫かどうか判明します。皮膚の水虫と異なり、塗り薬だけで治すことは難しく抗真菌薬を内服する必要があります。

過去3年半の間に250人余りの巻き爪を治療する中で、爪水虫の合併率が実に40%に及ぶことが分かりました。そして、爪水虫を合併している群と合併していない群を比較すると、合併群では巻き爪変形が重症で、平均年齢も高齢であることが判明したのです。

さて、巻き爪の原因は、何でしょうか? 陥入爪と同じように、爪の角を深く切ってしまう深爪や、足に合わない窮屈な靴を履くことなどが原因といわれています。また、これまでの経験から推察すると爪水虫も、巻き爪の原因または悪化要因ではないか、と考えています。

最後に、巻き爪の治療についてお話しします。まず手術により、爪の幅を狭くしたり、爪の土台となる爪床を平らにする方法です。手術以外では特殊な金属やグラスファイバーを用いて変形を矯正する方法があります。手術は、根治率は高いものの、身体への負担も小さくないため、特に高齢者や糖尿病、心疾患などの基礎疾患がある方には向きません。最近は、適応範囲の広さと手技的容易さから超弾性ワイヤーを用いた方法が、広まっています。また、爪を薄く削って平たんにし、人工爪で補強する身体に優しい治療方法もあります。なお、爪水虫を合併している方は、内服治療も併用することでより良い結果が得られます。

巻き爪や陥入爪は、いったん、化膿や痛みが出ると日常生活に大きな支障を来します。爪の切り方や自分の足に合った靴選びに留意して、日ごろから爪トラブルの予防に努めたいものです。また、爪の色が濁って厚くなり、湾曲してくると徐々に巻き爪が進行してきますので、早めの受診をお勧めします。