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大人の百日ぜき(2011年3月22日掲載)

下地 克佳・下地内科

乳幼児にうつさないで

マスコミ報道などで大人も百日ぜきにかかることが一般の方々にも認識されるようになってきました。10年前までは百日ぜきは子供の病気で大人は罹患(りかん)しないものと思われていました。しかし、いろいろな研究で大人も百日ぜきに罹患することが判明してきました。

百日ぜきは3〜5年の周期で流行します。2007〜08年にかけて流行しましたので、今年から来年にかけての流行が予測されています。

乳幼児、特に乳児の百日ぜきは重症化し、重篤な状態になることがありますが、大人の百日ぜきは重症化することはありません。大人が百日ぜきに罹患したときに最も注意することは乳幼児への感染を防ぐことです。

大人の百日ぜきの症状は、最初は風邪の症状と見分けがつきません。せきが始まって1週間すると、せきがだんだん強くなり、特徴的なせき発作(せきが出ないときは数時間まったく出ないが、出だすと連続的に嘔吐(おうと)するぐらい強いせき)になります。せき発作のときに、顔が真っ赤になる、涙が出る、舌がけいれんする方もいます。もう一つの特徴は5〜10回ほどの連続的なせきの後、喉が詰まった感じでヒイーヒイーと息が吸えなくなることです。

せき発作の時期が2〜4週間持続した後、せきは徐々に軽快していきます。せきの持続期間は約2カ月間です。大人の百日ぜきは乳幼児のように重症化しないといっても、せきで体力は消耗し、睡眠も障害されます。また、時に肺炎、副鼻腔(びくう)炎、肋骨(ろっこつ)骨折を合併することもあります。百日ぜきでは基本的に発熱はみられません。途中から発熱したときは、肺炎、副鼻腔炎などの合併を考える必要があります。

百日ぜきは感染力の強い疾患です。せきが出始めて3〜5週間は排菌があり周囲への感染の恐れがありますので、抗生剤の内服が必要です。生後3カ月以降の乳児には早めに予防接種(DPT)を受けさせてください。

百日ぜき、インフルエンザ、風邪など呼吸器感染症は飛沫(ひまつ)感染が主体です。飛沫感染はマスク着用で周囲への感染がかなり防げます。せきのある方は普段からマスク着用を心掛けましょう。また、せきの飛沫、鼻水が手に付着したときは手洗いをしましょう。

百日ぜきに特徴的なせきと思われる方は、早めに感染症科・呼吸器内科を受診してください。長引くせきの原因疾患は多数あり、特に、肺がん、肺結核、心不全、間質性肺疾患など重大な病気がないか確認が必要です。発熱、その他の症状がなくても、せきが2週間以上長引く方はぜひ医療機関を受診してください。