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大腸がんの切除(2011年3月8日掲載)

大嶺 靖・沖縄赤十字病院

負担少ない腹腔鏡下手術

がんはまれな病気ではありません。本邦では高齢化に伴い、男性の2人に1人、女性の3人に1人が一生のうち一度はがんにかかるといわれています。また男性では4人に1人、女性では6人に1人ががんで亡くなる時代になっています。増えているがんの一つに大腸がんがあります。今後、最もかかる可能性の高いがんになると予想されています。

しかし大腸がんは治りやすいがんです。早期に発見することができれば治ります。がんといえども不治の病ではありません。

大腸がんの症状には腹痛、下痢、便秘、下血などがあります。ただし症状が出るのは病変がある程度の大きさになってからで、初期の頃は症状がありません。

大腸がんは切除することが一番の治療で、それには内視鏡的治療と手術治療があります。

内視鏡的治療とは内視鏡(いわゆる大腸カメラ)を用いて、大腸の内側から病変を取り除く治療です。非常に小さな病変しか切除できませんので、治療できる症例は限られます。

手術治療の手法の一つに腹腔(ふくくう)鏡下手術というものがあります。ご存じですか。

初めに腹壁の数カ所を小さく切開し、そこから手術用器具を出し入れする管をおなかの中に刺入します。その後、おなかの中を映す腹腔鏡や数本の手術用器具を挿入し、おなかの中の映像をモニターで見ながら手術を行います。このような手術を腹腔鏡下手術といいます。病変部のある腸の支配血管を切り、周囲臓器から腸を剥がします。そうすると小さなきずからでもリンパ節も含めた長い腸を引き出すことができます。病変のある腸を切除し、おなかの外や中で腸をつなぎ直します。目はモニターにくぎ付け、手術用器具を持つ手はせわしなく動いていますから、さながらテレビゲームに夢中になっている状況に近い手術風景です。

腹腔鏡下手術はきず(手術創)が小さいため術後の痛みが少ない、回復も早いという利点があり、従来の開腹手術に比べ患者さんにとって負担の少ない手術です。またおなかの中で癒着が起こりにくいため、術後の合併症である腸閉塞(へいそく)の発生も少ないといわれています。欠点としては手技が難しいため、習熟には経験が必要になります。

利点の多い腹腔鏡下手術は今後、ますます広まっていくと思います。また現在の腹腔鏡下手術から一歩進んだロボット手術、そしてそれを応用した遠隔手術と、次のステージはすでに準備されています。当然ですが、目指すところは患者さんにとって負担の少ない、より根治性、安全性、機能性に優れた治療です。