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扁桃のいろいろ(2011年2月22日掲載)

神谷 義雅・那覇市立病院

生命に関わる疾患も

皆さんは風邪をひき高熱が続いたら、治療を受けに病院へ行くと思います。そのとき診察したお医者さんに「喉が赤く腫れています、扁桃(へんとう)炎です」と言われたことを経験した方もおられると思います。今回は口の中ののどちんこ(口蓋垂(こうがいすい)といいます)の両側にある梅干しのように見えるその扁桃についてのお話です。

年に4、5回発熱、咽頭痛を呈する扁桃炎を習慣性扁桃炎といいます。炎症のひどいときは赤く腫れた扁桃に白苔(はくたい)が付くのが特徴です。また時には扁桃そのものより、その周囲が腫れて、口も開けづらく、耳にも痛みが響くときは扁桃周囲膿瘍(のうよう)と思われます。どちらも発熱、喉の痛みが強くて食事が取れないときは入院治療(安静と抗生剤の投与、時に切開排膿)が必要になります。根本的な治療としては症状が落ち着いたときに扁桃摘出術を行っています。

次に扁桃肥大についてお話しします。両側の扁桃が真ん中でぶつかり合うくらい大きいものはV度肥大といいます。いびきが大きく、寝ているときの呼吸も安定せず熟睡できないこともよくある症状です。これも扁桃摘出術のよい適応といえます。扁桃摘出術を受けた小児の患者さんが夜間いびきもなくぐっすり眠れていますと保護者から喜ばれています。

次に扁桃が原因で他の科の疾患に及んでいることについてお話しします。扁桃の病巣感染症といいます。

中でもよく知られているものとして皮膚の掌蹠膿庖症(しょうせきのうほうしょう)があります。手のひらと足の底にのみ膿庖がみられるのが特徴です。扁桃摘出術を行うことによって徐々に手掌(しゅしょう)、足底の膿庖が改善していく比較的改善率の高い疾患の一つといえます。また、腎疾患で内科通院中の方にTgA腎症と言われた方もおられると思います。症例によって扁桃摘出術を行うことで治療効果を高めているとの報告も多くなっています。

最後に、やはり扁桃にも悪性腫瘍はあります。リンパ組織に由来する悪性リンパ腫と、扁桃がんです。

どちらも扁桃の片側だけ腫れるのが特徴です。左右差があり球状でやや硬いときは悪性リンパ腫で、ごりごりと硬い部位があるときは扁桃がんが考えられます。ごく初期は喉の痛みがなく違和感のみのこともあり注意が必要です。どちらも早めの診断治療を必要とする生命に関わる疾患です。このようにいろいろな面をみせる扁桃ですが、その病態が徐々に解明されています。上記の症状に心当たりの方はかかりつけ医と相談をされることをお勧めします。