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禁煙の勧め(2011年2月15日掲載)

知花 幹雄・おろくハートクリニック

ニコチン呪縛は7日間

たばこを吸っている人に「あなたにとってたばこを吸うメリットは何ですか?」と訊(き)くと、「たばこを吸うとイライラ・ストレスがとれるんですよ」と皆答えます。その他のメリットを訊くと、「食後の一服は最高においしいんです」と答え、この二つ以外には出てきません。(1)イライラが取れる(2)食後の一服は最高においしい―これは本当に吸うことによって得られるメリットなのでしょうか。実は違うのです。この二つはたばこに人間が騙(だま)されている最大の誤解なのです。

人にはさまざまなストレスがあります。仕事のストレス、対人関係のストレス、借金返済のストレス、交通渋滞に巻き込まれたときのストレスなどなど。しかし、たばこでこれらは絶対に取れません。ところが、たばこで100%取れるストレスがたった一つだけあります。それは「ニコチン切れのストレス」です。

たばこを吸えばストレスが取れるのではなく、たばこを吸っているがために、体内へ蓄積されたニコチンが減ってきたときに「ニコチン切れのストレス」でイライラさせられているのです。そこで、たばこを吸ってニコチンを補給するとこのストレスがとれるのです。実に巧妙なニコチンの罠(わな)にはめられているのです。

ではこのニコチンの呪縛から、どうしたら解き放たれるのでしょうか? 簡単です。吸うのをやめればいいのです。ではニコチン切れのイライラが出なくなるまでどれだけの期間が必要なのでしょう。実はたったの7日間です。3日目がイライラのピークですが、これを乗り越えれば、体が震えるほど「吸いたい」と思っていた気持ちが萎(な)え、7日目には食事がおいしくなり、ニコチン切れのイライラは出なくなります。当然食後の一服も要りません。

あとは一日一日の禁煙の積み重ね。そして2年もたてば卒煙し、たばこ大嫌い人間になります。これは、私が禁煙に導いた多くの患者さんの体験談のまとめです。ニコチンに対する肉体的依存性は早くてたった3日で取れます。問題は心の依存性で、「たばこを吸えばイライラがとれていたなぁ」という心が残っていると仕事のストレスが強いときに吸ってしまい、何本吸ってもこのイライラはとれず、血液に取り込んだニコチンのせいでまたニコチン切れのイライラの生活に戻されてしまいます。

自分を禁煙に導く一番いい方法は、禁煙に成功したヘビースモーカーの体験談を聞くことです。また、最近は禁煙に導く薬も開発されていますので、どうしても禁煙できないときはお医者さんにも相談してみてください。