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小規模多機能居宅介護施設(2011年2月1日掲載)

涌波 満・医療法人アガペ会

自宅暮らしを継続支援

「小規模多機能居宅介護施設」―読者の皆さまは、このような名称の施設をご存じですか。長々としていて何を目的とした施設であるのか、理解しにくいですね。

「小規模」とは、その施設を利用するご高齢者の人数が1日に15人程度、登録できる人数が25人程度というこぢんまりしたサービスを提供することを意味します。

「多機能」とは、介護サービスのうち、自宅から日中施設に通い専門職のスタッフから入浴介護やレクリエーション活動を通した生活介護を受ける「通所介護」、自宅で介護が困難になったとき、訪問して支援をしてくれる「訪問介護」、さらに、必要に応じて施設で宿泊ができる「ショートステイ(1日当たり9人)」の三つの機能を一つの施設で併せ持つことを示しています。

施設の同じスタッフが、時には自宅を訪問したり、ご一緒に施設でお泊まりしたりといった、自宅に暮らしながら継続的な支援ができる介護の24時間サービスを提供する場所なのです。

利用者の例を挙げてみます。

(1)もともと社交的ではなく、集団での活動が苦手なご高齢者―介護士が自宅に定期的に訪問し人間関係を築きながら、通所サービスに自然な形で移行することができます。閉じこもり生活に対する打開策となります。

(2)認知症を患っているために、環境の変化に敏感であるご高齢者―これまでは、ショートステイをケアプランに取り入れようとすると、今通っているサービス施設とは別の施設にお願いをする必要がありました。しかしながら、小規模多機能居宅介護施設では日ごろ通っている場所でそのままお泊まりができます。ショートステイの間ご家族は完全に介護から解放され、気持ちの余裕を取り戻すことができます。

(3)独り暮らしや介護する人が一人しかおらず、安定した自宅療養が難しいご高齢者―ご本人の体調不良や介護者の急な用事など、自宅で看病する人がいない場合に、ショートステイをすることで急場をしのぐことができます。

このような施設は、各中学校区域に一つの割合で市町村が設置できるよう制度化されています。私は、この施設に地域の人たちが、公民館のように出入りしてくれたらと思います。介護を必要とするご高齢者と触れ合って、雑談したり、ゲームや習い事をしたりして、お互いを理解し、若い人たちも含め、地域でご高齢者を支えあっていく意識を育んでいくことができたなら、どんなに素晴らしいことかと考えるのです。

読者の皆さまも近くにある小規模多機能居宅介護施設に足を運んでみませんか。