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大腸がん検診のすすめ(2011年1月25日掲載)

豊見山 良作・那覇市立病院

早期発見で有効治療を

厚生労働省の統計によると、死因順位別にみて第1位は悪性新生物(多くはがん)、第2位は心疾患、第3位が脳血管疾患となっています(2006年)。がん死因部位別にみると、男性では、肺がん、胃がん、肝臓がん、ほぼ同数で大腸がんの順となっており、女性では、大腸がん、胃がん、肺がん、乳がんの順となっています。大きな問題は、この中で大腸がんが年々増加傾向にあることです。

がんによる症状が出てしばらくしてから、かなり進行した状態で初めて病院を受診される患者さんは多く、受診時にはすでに手遅れの状況のこともあります。抗がん剤の進歩は目を見張るものがありますが、一般的に抗がん剤のみでがんを完全に治すのは厳しい現状です。

救命には早期発見による摘出手術が最も有効です。食道や胃腸では初期に発見されれば内視鏡治療で治すことができます。症状を伴ったがんは既に進行したがんであり、治療によって治すことが難しい時期になっていることもあります。したがって、症状が出る前に健康と思われる時にがん検診を受けて早期発見することが重要です。

生活習慣の改善による一次予防ですべてのがんを防ぐことはできず、がんで亡くなることを防ぐには二次予防、すなわちがん検診での早期発見が必要です。

世界保健機関(WHO)による国家的がん対策プログラムでも、3分の1のがんは禁煙で予防でき、さらに3分の1は、有効性の証明された検診による早期発見で救命可能とされています。この事実を理解して、適切な検診を受けることで、がんによる死亡は減らすことができるのです。

大腸がんは検診により死亡率が下がる十分な根拠があります。また、がんの中でも早期発見しやすく、初期のがんであれば、おなかを切らずに、大腸内視鏡でがんを確認しながら切除(無痛です)して完治が可能です。

国は当面5割以上の受診率を目標に掲げていますが、沖縄県および日本のがん検診受診率は約2割程度しかありません。多くの方が、せっかくの検診を受けていないことになり、もったいないことだと考えています。

これまで述べたように、がんは早期発見・早期治療で肉体的・精神的・時間的・経済的にも負担が減り、結局楽に治すことができます。最後に、世界屈指の内視鏡先進国である日本で暮らしている恵まれた環境をもっと利用していただきたいと思います。