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パープルリボンを知っていますか(2011年1月18日掲載)

砂川 宏樹・中頭病院

膵臓がんの早期発見を

がんの三大療法は手術療法・放射線療法・化学療法であります。外科医はその手術療法を担う立場です。

僕は腹部の消化器疾患の治療に携わる外科医ですが、特に膵臓(すいぞう)や肝臓・胆のうを主に治療しています。その治療を通して感じることがあります。

早期発見・早期治療の概念が定着してきた胃がん・大腸がんや乳がんなどと違い、肝臓や膵臓の腫瘍は診断時にはすでに進行していることが多いのです。

肝臓は体内の分解・代謝・解毒をつかさどる臓器です。沈黙の臓器として有名ですね。肝炎から肝硬変そして肝がんへと移行するのです。しかし、肝がんには、ほとんど症状はありません。

膵臓は消化酵素の分泌やインシュリンなどを分泌する臓器です。腹部の中でも最も背中側にあり、がんが大きくなるまでほとんど症状はでません。

しかも膵臓の周りには大きな血管が通過しており、せっかくがんが発見されても切除ができないこともあるのです。

全体でのがん死亡率で見ますと肺がん・胃がん・大腸がん・肝がん・膵がんの順となっています。肝がんや膵がんの病気にかかる確率は高くありません。しかし、死亡率で見ますと肝がんは4位で膵がんは5位なのです。それだけ進行状態で見つかることを示しています。

がん対策基本法の柱になっている五つのがんがあります。いわゆる五大がんといい、肺がん・胃がん・大腸がん・肝がん・乳がんでなっています。この対策に入っていないのが膵がんなのです。

ここでパープルリボンです。ピンクリボンならご存じの方も多いでしょう。ピンクリボン運動は乳がん検診の啓発に貢献しており、とても有名なシンボルです。では、パープルリボンはなんでしょう。パープルのPはpancreas(膵臓)のPをとっています。パープルリボン運動は「膵臓がんの早期発見・早期診断・早期治療の大切さ」と「膵臓がんの患者さんとその家族を応援しています」というメッセージを表しています。

肝臓や膵臓の手術では従来大きな切開創で行っていました。しかし、時代は進歩し低侵襲治療(体にやさしい)の一つである腹腔(ふくくう)鏡治療も行われるようになってきました。検診で早期発見し、できるだけ低侵襲治療を行い、早い社会復帰を目指しましょう。

耳を傾けないと聞き取れないほど小さな声で叫んでいるかもしれません。積極的に耳を傾ける、そんな機会に検診を利用しませんか。