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スポーツ心臓(2011年1月11日掲載)

三戸 正人・ハートライフ病院

疾患隠れで突然死も

スポーツ心臓、スポーツマン心臓という言葉を聞いたことはありませんか?

スポーツ医学という分野が進歩し、運動やトレーニングを続けることで心臓にもいろいろな効果が表れることが分かってきています。

オリンピックに出るようなマラソン選手の心拍数が安静にしている時では、40/分以下と非常に遅いことがあるということをご存じの方も多いのではないでしょうか。

一般の方の心拍数は60〜80/分ですので、そんなに遅くて大丈夫なのと心配になりますが、長年のトレーニング効果で、心臓の筋肉、容量が少し大きくなり、心臓から送り出す1回の血液の量が通常の方より増えていることで、運動をする時には心拍数は通常通り増加するため、運動中の心臓からの血液量は増加し、最大の効果を得ることができるような合理的な反応といわれています。

スポーツ心臓では、脈が遅いこと以外にも心電図の異常(洞性徐脈、房室ブロック、右脚ブロック、左室高電位)や、レントゲンの異常(心拡大)などが指摘されることがあります。こういった変化は、ほぼ毎日1時間以上のトレーニングをする方でみられることがありますが、スポーツの習慣がなくなると1年以内に改善傾向が認められることも分かっています。

検診で異常を指摘され、精密検査のために病院や診療所を受診すると、「スポーツをしていたのであれば、大丈夫」といわれたことのある方も多いと思います。しかし、スポーツ心臓といわれていた人の中に本当の心臓の病気(肥大型心筋症、虚血性心疾患、洞不全症候群、不整脈原性右室心筋症など)が隠れ、運動中に突然死をしてしまうこともありますので、一度は心臓の超音波(エコー)検査などを受けられることをお勧めします。

健康のためや趣味として始めたマラソン、ジョギングを楽しまれている方も多いかと思いますが、マラソンでは5万人に1人の割合で突然死を起こしてしまうことも知られ、運動習慣のない40歳以上の男性、50歳以上の女性ではメディカルチェックとしての運動負荷試験がすすめられています。

昔は陸上選手だった、インターハイ、国体にも出たことのあるかつてのスポーツマンの皆さん、あれから○年がたち、体型もだいぶ変わってしまったのを実感される場合、運動を楽しまれる前に、心エコー検査や運動負荷心電図(トレッドミル負荷心電図、心肺運動負荷試験)などで、心臓の状態をチェックしてみませんか。