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足の動脈硬化にご用心(2011年1月4日掲載)

和氣 稔・県立中部病院

異常に気付きにくい特徴

年齢とともに血管も老いていきますが、高血圧、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病や喫煙、肥満などがあるとさらに血管は傷つきやすく、硬くなっていきます。血管の内側にコレステロール等が沈着して血管が狭くなる状態を動脈硬化症といい、血液の流れが悪くなって筋肉や臓器に十分な酸素や栄養を運ぶことができなくなるとさまざまな病気が引き起こされます。

頸(けい)動脈や心臓に栄養を送る冠動脈の狭窄(きょうさく)によって脳梗塞や狭心症/心筋梗塞が起こることはよく知られていますが、見逃せないものの一つに足の動脈硬化による「末梢(まっしょう)動脈疾患」があります。

末梢動脈疾患は閉塞(へいそく)性動脈硬化症とも呼ばれ、下肢の血流不足による症状として足のしびれや冷感、少し進行すると歩行時に足が重く(痛く)なって歩けなくなりしばらく休むとまた歩けるようになる“間欠性跛行(かんけつせいはこう)症状”、さらに進行するとじっとしていても足が痛む、足の傷が治りにくくなるなど病気の程度によって自覚症状もさまざまで、重症化すると足の切断を必要とすることもあります。

多くの方は間欠性跛行症状が受診のきっかけとなりますが、ゆっくり進行するためなかなか異常に気付きにくく、また車社会の沖縄では通勤や買い物などで長く歩く習慣が少ないため発見が遅れ、重症化して初めて症状を自覚する方もおられます。脊椎の変形で神経が圧迫されて起こる脊柱管狭窄症でも似た症状が現れますが、脊柱管狭窄症では背筋を伸ばすと痛みが悪くなり前かがみでは痛みが和らぐという姿勢での症状変化がみられる点が異なります。

診断は、触診や両手両足で同時に血圧を測定し、超音波検査やCT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像装置)、血管造影などで狭窄の場所や程度を調べます。また、末梢動脈疾患の2人に1人は狭心症などの冠動脈疾患を合併しているといわれていて、頸動脈や腎動脈など他の動脈硬化を合併していることも多いので、足の治療の前にまずしっかりと全身の重要な血管の評価を行う必要があります。

治療は薬物療法、血管内カテーテル治療、外科手術などを病気の重症度に合わせて検討しますが、循環器内科や血管外科だけでなく糖尿病、腎臓、神経などの専門内科、脳外科、整形外科、皮膚科、形成外科など多くの診療科の協力が必要なことも少なくありません。そして足の治療だけでなく、動脈硬化の危険因子をしっかりコントロールして将来脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こさないように予防を心掛けることも大切です。