おしっこの回数が多くて（頻尿といいます）困っている方は大勢いらっしゃいますが、その原因はさまざまです。例えば、膀胱（ぼうこう）炎や前立腺肥大症などは有名ですね。今日はストレスからくる頻尿についてお話しましょう。
１８歳の彼は野球部員でした。夏の甲子園の予選がもうすぐ始まるころに相談に来ました。少し細身ですが身長が高く、これまでほとんど病気などしたことがないとのこと。相談内容は最近急におしっこの回数が増えていることでした。夜中は全くおしっこに行きませんが、昼は１時間に３回行くこともあったそうです。
検査では全く異常はありませんでした。そこで若い子にも起こる前立腺の炎症だろうと診断してお薬を出しましたが、２週間後の受診のときも全然症状がよくならないというのです。いろいろと話を聞いていると野球の練習のときによくおしっこに行きたくなり、休みの日にはそうでもないとのこと。レギュラーになるためのプレッシャーが大きかったのでしょう。そこで、彼に合う漢方薬を処方したところ２週間後にはほとんど症状はなくなっていました。
５４歳の女性の話です。以前から夜間は大丈夫だけれど昼間は１時間に３回おしっこをするというのです。検査ではほとんど異常ありませんでした。おしっこの回数と量を記録してもらうと、昼間はやはり２０回以上の頻尿でした。
その方はご主人が脳梗塞になり、家で面倒をみていることや、近い親戚が入院しており自分以外面倒を見る人がいないなどいろんな悩みをお話してくれました。この方にもストレスが原因と説明し漢方薬を処方したところ、回数も減り夜もよく眠れるようになったと喜ばれました。
いろんな精神的なストレスでおしっこの回数が多くなることを心因性頻尿といいます。夜間より昼間におしっこの回数が多いのが特徴です。頻尿にはいろいろと原因があり、診断治療が難しいこともありますが、一般的な頻尿治療のほか、このように漢方薬が効果的な場合もあります。ほかにも頻尿となる病気は数多くあり、私たち泌尿器科医が一生懸命診療していますのでお気軽にご相談ください。
高校球児の後日談ですが、偶然テレビで県予選の試合を見ているとその子がバッターボックスに立っているではありませんか。見事に一、二塁間にヒットを打ちました。日ごろ医療ってなんだろうなんて考えることもありますが、少なくとも沖縄県の高校野球に役立ったことに間違いありません。