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赤ちゃんのために(2010年10月5日掲載)

大橋 容子・県立南部医療センター・こども医療センター

妊娠前から葉酸摂取を

一般的に、産まれてくる赤ちゃんの約5%に何らかの生まれつきの病気があるといわれています。心臓の病気や指の数などさまざまですが、ほとんどは、たまたま起こっただけで、ある一定の確率で誰にでも起こり得ます。

それらの一つである、無脳症や二分脊椎(せきつい)といった神経系の病気は、もともとは西欧で多く、アジアではあまり多くはありませんでした。しかし近年欧米諸国で、妊娠前からサプリメント等で積極的に葉酸を摂ることにより、これらの発生が減りました。今では日本の方が高い発生率となっています(日本での二分脊椎の頻度は、2003年で赤ちゃん1万人に対し5・6人)。

また最近では、葉酸には、二分脊椎等だけでなく、その他の生まれつきの病気や妊娠高血圧症を予防する効果もあるのでは、との報告も出てきています。

あくまでも集団としてみると減ったということで、一つ一つの妊娠についてどこまで当てはまるかは分からないと強調しておきたいのですが、これらの報告を受けて日本でも2000年に厚生省(当時)から、妊娠可能な女性に葉酸の摂取について情報提供するように、との通知がありました。

葉酸はビタミンBの一種で、もともとほうれん草から発見され、緑黄色野菜に多く含まれます。体内での貯留が不安定なので毎日補充しないと不足しがちです。妊娠中は葉酸の需要が増すので、相対的に葉酸不足になります。アルコールや喫煙でも消費されて足りなくなります。熱に弱く調理によって失われやすいので食事からだけで摂るのは難しく、妊娠中はサプリによる補充が勧められます。

また、妊娠に気付いてから摂り始めたのでは遅く、妊娠前から摂取しなければなりません。なぜなら妊娠に気付いたころにはすでに、脳や脊髄(せきずい)などが作られ始めているからです。それらの形成に葉酸が必要とされています。

厚生省の通知では、妊娠の1カ月以上前から、通常の食事からとれる葉酸に加えサプリメントとして1日0・4ミリグラムの葉酸を摂取することとされています。しかし、欧米の文献など読むと、妊娠の少なくとも3カ月前から、としているものが多いです。葉酸は水溶性ビタミンなので、摂り過ぎても体内に過剰に蓄積するということはありません。

ところで、妊娠の3カ月前から葉酸のサプリを毎日飲んで計画妊娠するようなマメな女性が一体どれほどいるでしょうか? 余計なお世話かもしれませんが私は、職場の女性が結婚するときに葉酸のサプリを贈っています。